リウマチ治療の今昔-バイオの時代へ
大浦孝・おおうらクリニック(2019年7月29日掲載)
詳細に診断、炎症寛解へ ~沖縄県医師会編
リウマチはリウマチ・ロイマとも呼ばれていました。ギリシャ語で「流れる」という意味の言葉に由来します。疼痛(とうつう)原因物質が体中を流れて疼痛が発生すると考えられていたようです。外来語がそのまま病名となり訳語はありません。強いて訳語を付ければ手指関節を中心とする全身の「多発性関節炎」となります。
症状として朝の手指関節のこわばりでお箸が持てなくなることもあります。全身の関節痛があると起床時、起立・歩行不能となることもあります。治療せず放置すると、関節は破壊され変形します。長い経過の末期には松葉づえが必要となり、車いす生活になることもあります。
昔は有効な治療がなく温泉療法や転地療法もありました。その後アスピリン等の鎮痛剤を中心として対症療法が普及しました。1948年、副腎皮質ホルモン剤が開発され、リウマチにも適用したところ、強力で速効性があり車いすの患者さんがダンスも踊れるようになったとニューヨーク・タイムズが報じております。今でも有効な薬剤ですが副作用には細心の注意が必要です。
リウマチは多量の自己抗体を産生し、関節で炎症が発生する自己免疫疾患の一種でもあります。従って抗体産生を抑制する免疫抑制剤も有効な薬剤です。
現代はバイオの時代です。リウマチの病態が詳細に解析され、炎症の真犯人である重要な分子が同定され、この分子に対する抗体が作成され、この抗体製剤がミサイルのように真犯人を打ち落とすのです。炎症は火が消えるように消退します。このようにしてリウマチも寬解する時代となりました。さまざまな生物学的製剤の開発は現在も進行中です。
最も重要なことは診断です。病歴、診察、検査、画像によって確定されます。その次に、罹病(りかん)期間、活動性、重症度、合併症の有無、経済状況等を勘案して治療方針が決定されます。治療の導入期2週間程で反応があります。治療の維持期2、3力月で軽快し、次の完全寬解が目標となります。