手指の関節も年を取り変形する

宮里剛行・ロクト整形外科クリニック(2019年6月23日掲載)

ヘバーデン結節 ~沖縄県医師会編

 母が「指先が痛む」と言うので、久しぶりに母の手をみてみました。昔は白魚の手とよく言われたと話していますが、今では立派なワカサギです。


 実は手指の関節も膝関節と同様に年を取って変形します。特に指の一番先の関節(DIP関節)に多く、初めて報告した人の名前からヘバーデン結節と呼ばれます。中高年に多く、60から70歳台で約70%の女性に出現します。男性も同じ変形を生じます。


 物をつまむ動作や握る動作などでDIP関節が赤く腫れて痛くなります。初期は使い過ぎると関節炎になり痛くなる程度ですが、変形が進行すると常に痛くなります。末期には関節は太くなって隆起して動かなくなり、逆に痛みは少なくなります。関節が横に傾いて不安定になると痛みが強く残ることもあり、時には水疱(すいほう)状の腫瘤(しゅりゅう)(粘液嚢腫(のうしゅ))ができ、爪を圧迫して変形させることもあります。


 外来をヘバーデン結節で多くの女性が受診なさります。家事で使用する機会も多く痛みが強くなるのでしょう。指の変形から関節リウマチを心配なさることもあります。それはDIP関節から発症しないことを説明して安心いただいています。またX線撮影で特徴的な骨の所見を確認し、他の疾患とも鑑別します。


 さて治療ですが、関節炎で痛い場合には、テープなどで関節を固定して安静を保ち、消炎鎮痛剤(痛み止め)の軟膏(なんこう)や湿布などで炎症を抑えます。変形して不安定となり痛みが強い場合には、関節固定手術を行い、痛みを消失させます。その際に突出した骨を切除するので、外観がほっそりとした指になります。難治性の粘液嚢腫の場合には切除術で爪の変形を改善させます。


 私の手指にも初期のヘバーデン結節があり時々痛みます。同じ訴えに共感しますし、手術を躊躇(ちゅうちょ)する気持ちもわかります。皆さんの負担を少しでも軽くする様にお手伝いしたいと願っています。

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