はしかで588人が死亡したフィリピン

仲宗根正・那覇市保健所(2019年6月9日掲載)

日本でも起こる? あらためて知る予防接種の大切さ ~沖縄県医師会編

 はしか(麻しん)が国内外で流行しています。世界保健機関は、世界の今年の患者数が昨年同期の約4倍にまで急増していると報告しています。


 身近な国を1例挙げます。フィリピンでは2018年からのはしか流行で約4・9万人の感染者と588人の死亡者が報告されています。日本では今年、感染者が2014年の462人を突破して、ここ10年で最多の流行となっています。


 沖縄県では昨年前半に、はしかの流行がありました。101人の感染者が確認されましたが、幸い、脳炎や肺炎などの重症例はなく、死亡者はゼロでした。しかし、2000年前後の大流行では約3600人が感染し、残念ながら9人のお子さんが亡くなられています。


 世界で急増しているので、今後、日本でもフィリピンのように数万人(沖縄県では数千人)規模の流行が起こるのでしょうか? いいえ、そこまでの流行にはならないと思っています。国立感染症研究所の18年度感染症流行予測調査(速報値)によると、2歳以上のすべての年齢/年齢群で、はしかの抗体保有率が95%以上です。すなわち95%以上の国民が、はしかに対する一定の免疫力を持っているのです(集団免疫)。このような集団では大流行は起こらないとされています。この集団免疫の多くは予防接種で国民全体で獲得したものです。


 予防接種には自分を守る効果だけでなく、医学的理由で予防接種を受けることが出来ない方(難病のお子さん方)、白血病などの治療で免疫が落ちている方、思想信条上の理由で予防接種を受けなかった方などの、はしかに弱い方々を集団免疫で守る効果もあります。


 95%以上の抗体保有率を保つには少なくとも95%以上の予防接種率が必要です。残念ながら沖縄県のはしかの予防接種率は約90%で不十分です。昨年、はしかに弱い方々を守ることができたのは偶然かもしれません。


 今後は集団免疫でしっかり守れるように予防接種をしっかりお願いします。

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