ストレスから続く心因性せき

(2019年4月14日掲載)

「感情のコントロールを」 ~沖縄県医師会編

 風邪や気管支炎は治ったのに咳(せき)だけが長引いている方はいませんか。とりたてて身体的な異常はないが咳だけが長びいて治らないという病気があります。ストレスが密接に関与している心因性咳嗽(がいそう)(せき)もそのひとつです。


 心因性咳嗽の特徴は、(1)急性の咳がでる風邪、気管支炎などの感染症や、呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)、咳嗽が出現する気管支喘息(ぜんそく)などとは異なり、痰(たん)がからまないコンコンという乾いた咳が慢性的に続くこと(3カ月以上)、(2)季節に関係なく起こり、日中に起こることが多く睡眠中にはほとんどなく、また何かに集中している時には全くでないこと、(3)いろいろな検査をしても咳がでる身体的な原因がみられないこと、(4)治療の経過で咳止めの薬、炎症を抑える薬、抗生物質などの薬は効果がなく、抗不安薬や抗うつ薬および各種の心理療法が効果を発揮すること、(5)以上のことからその発症と経過には何らかのストレス(心理社会的因子)が関与している、などです。


 日常のどのような出来事がストレスになるのでしょう。職場では、過重な労働が続く、良好な人間関係が築けない、働きがいが見いだせないこと、家庭では、嫁・姑(しゅうとめ)の関係、夫婦関係、親子関係が良好でない場合にストレスになります。また、ゆとりのない生活、不規則な生活、運動不足、睡眠不足などにも要注意です。


 最も見逃せないことは、欲求不満や葛藤があるにもかかわらず、常に自分の嫌な感情を抑えてまで周りの期待に応えようと過剰な適応努力をしている人に起こった咳が、その人の感情の抑圧のはけ口になって慢性の咳となり持続することです。


 対策は、入浴、適度な運動、十分な睡眠などのストレスの解消だけでなく、欲求(愛情、承認など)や感情(怒り、悲しみなど)の抑圧を適切に処理していくことが大切です。


 なお、長引く咳の症状は、最近増えている逆流性食道炎やある種の降圧薬の副作用としても見られることがありますので注意が必要です。

このページのトップへ