加熱式タバコ、健康被害は紙と変わらず

譜久原弘・南山病院院長(2019年2月3日掲載)

~沖縄県医師会編

 2019年7月から受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が施行され、多数の人が出入りする病院や学校、行政機関などが屋内禁煙となります。罰則付きの法律であり、以前と比べると前進しましたが、加熱式タバコについては不十分な対応になってるため、この法案をきっかけにさらに増える可能性があります。


 加熱式タバコとは、タバコの葉を電気で加熱し発生する蒸気を吸入します。火を使わないため煙が出ず、臭いが少ない事から、タバコ会社は多くの紙巻きタバコに比べ有害物質の除去、健康被害の軽減、受動喫煙の軽減などをアピールし、「マナー」「共存」といった爽やかなイメージを作り上げています。2018年で世界40カ国以上で販売され、日本での利用者は540万人と世界の98%を占めています。


 タバコ会社は加熱式タバコが紙巻きタバコに比べ有害物質が大幅に削減されると公表しています。しかし、国内外の公的研究機関はタールとニコチン量について大差がないこと以外にも、特有の有害物質の発生を指摘しています。また、禁煙の代替手段としての有効性は低いといった結果も公表されています。


 一昔前までタバコ会社は、健康被害の軽減をうたい低タールを推奨してきましたが、調査結果から本数の増加や深く吸引する事で、健康被害が変わらないことが分かりました。米国では、公的機関から加熱式タバコのリスク低減を否定され、販売に至っていません。現時点では、安全性は確認できていません。


 タバコ会社は加熱式タバコの普及に力を入れており、従来のタバコのイメージを払拭(ふっしょく)し、若者や禁煙を考えている人を狙っています。特に子供を守る必要があり、社会全体として(1)法整備する(2)正しい知識の普及をするための活動-が重要です。


 現在、禁煙治療薬が開発され、昔に比べると楽に禁煙ができるようになりました。治療を受けるための禁煙条件も緩和され、未成年にも健康保険が使用できます。興味のある方は、禁煙外来のある医療機関へご相談されてみてはいかがでしょうか。

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