「がんの疑い」書かれてなくて本当によかった

清水隆裕・ちばなクリニック(2019年1月10日掲載)

未開封の健診結果 ~沖縄県医師会編

 1億円の当選金を受け取りに来ない人がいる…。にわかには信じがたい話かもしれませんが、毎年のように高額当選した宝くじが時効を迎えているそうです。素直に受け取れば、人生に大きな影響を与えるのに、それを放置してしまう。そんな人たちは、実は決して少なくありません。


 私が専門としている健康診断もそうです。健康診断の目的は(1)各種生活習慣病の予防(2)悪性疾患(がんなど)の予防と早期発見です。ところが、何らかの異常が指摘されても、そのまま放置されてしまう事例が非常に多くみられます。その結果、取り戻せるはずだった健康を取り戻すことができなくなってしまうのはとても残念です。


 過去には「健診結果票を見ても分からない」と、未開封の前年度の結果通知をそのままお持ちになり説明を求められたこともありました。この方の場合は、大きな病気はありませんでしたが、何年もたった今になっても「がんの疑い、要精密検査」などと書かれていなくて本当によかった、と思い出すことがあります。


 米国の広告界のカリスマ的存在だったサックハイムは、文書を手にしてからの人々の行動を「読む」「信じる」「行動する」の3つのステップに分けて、それぞれにハードルがあると評しています。


 これを健診結果に照らし合わせると、そもそも読んでいない、読んでいてもそれを信じていない(自覚症状もないからたいしたことはない、私ががんにかかっているはずがない、など)。そして、適切な行動をとらない(精密検査を受けない、治療を開始しない、など)といったところでしょうか。これは誰しもが陥ってしまう「わな」なのかもしれません。 そこでお願いです。健診の結果を受け取ったら、まずは封をあけて中身を読み、その結果には自己解釈を加えず、書かれた内容に従って行動をとってください。そうすると、1億円でも買うことのできない、皆さんの健康が取り戻せるかもしれません。

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