ウイルスだけじゃない

真栄田宗慶・アメカル耳鼻科クリニック(2018年12月7日掲載)

知ってほしい「インフルエンザ菌」 ~沖縄県医師会編

 私のクリニックでは次のような会話がよく交わされます。


「赤ちゃんの鼻汁から細菌検査でインフルエンザ菌が出ました」

「インフルエンザ!?」

「ウイルスでなく細菌です」


 1933年にいわゆる流行性感冒(インフルエンザ)がウイルスによるものとされるまで、原因と考えられていたのがインフルエンザ菌です。インフルエンザウイルスとは全く別のもので、正式にはヘモフィルス・インフルエンザ菌と言い、髄膜炎や肺炎など感染症を引き起こします。


 肺炎球菌、インフルエンザ菌b型(Hib)には、髄膜炎予防目的の小児用ワクチンがあります。肺炎球菌は高齢者用ワクチンがテレビでも放送されていますが、Hibワクチンは名称が略されているため周知が不十分です。


 Hibワクチンのおかげで、小児の髄膜炎や喉頭蓋炎は95%以上激減したとのことです。一方で、b型による中耳炎は元々5~10%程度で、残念ながら中耳炎や副鼻腔(びくう)炎は減少した感がありません。まだまだ抗生物質が必要ですが、それに対する耐性菌も増加しており、今後、Hib以外にも有効なワクチンが待たれます。


 5歳以上になると菌に免疫ができるといわれていますが、特に2歳以下の小児では、免疫力がなく、十分に鼻がかめないため鼻汁が奥にたまり、細菌が増殖しやすくなります。


 両親にはできるだけ鼻汁を吸い取るよう指示しますが、時に親も感染します。最近はインターネットで電動の鼻汁吸引器を購入する親も多いです。鼻汁を止める薬を希望する親も多いですが、自分で鼻をかめないと、かえって鼻汁が濃縮されてしまいます。また発熱時に鼻汁を止める抗ヒスタミン剤を与えると熱性けいれんを誘発しやすいとの報告もあり、鼻汁や痰(たん)を排出させやすくする薬剤を選択します。夏はエアコンで室内が乾燥し、冬は空気が乾燥すると、鼻汁が硬くなり出しにくくなります。お風呂やシャワーで鼻汁を取りやすくすることをお勧めします。

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