人生の最期を話そう

嘉数朗・おもろまちメディカルセンター循環器内科兼訪問診療(2018年11月3日掲載)

尊重すべきは患者意思 ~沖縄県医師会編

 「いつまでも元気に生きていたい」。人は誰でもそう思います。しかし、人生の最期は必ずやってきます。健康なうちに人生の最期を真剣に考える人はほとんどいないでしょう。そんな話は縁起でもないと批判されがちですが、病に倒れてから話をするほうがもっと縁起でもないのではないでしょうか。


 健康なうちに自分の望む最期を家族に話しておかないと、不治の病に倒れ意思を伝える事が出来ない状況になった時、家族には本人がどのような最期を望んでいたのかを知るすべがありません。医療現場では、動揺した家族が本人が望まなかったであろう延命治療を選択してしまうことが時々あります。


 そのような不幸を避けるために、リビングウイルというものがあります。リビングウイルとは終末期医療における事前指示書で、不治の病になった時に延命治療を選択しない等の意思を、本人が健康で判断能力があるうちに文章として発行するものです。リビングウイルがあると延命措置を行わず自然の摂理にゆだねた寿命を迎えることができます。しかし、縁起でもないという感情のせいか、まだ一般に広まっていません。


 最近、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という概念が重要視されています。ACPとは、将来の変化に備え、将来の医療およびケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や親しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのことです。


 患者さんの尊厳ある生き方を実現するために、医療者はACPを通して本人の意思を確認します。自分の意思を伝えることができる時から繰り返し話し合いを行い、意思を共有します。それにより、例え意思が確認できない状態になっても、本人の意思を推測することができるのです。本人の望む最期を家族と伴にあらかじめ医療者と共有しておく事で、心穏やかに最期を迎える事ができるのです。


 健康なうちに人生の最期について話すことが大事なのです。

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