問題ある飲酒、数値化して知るには?
岸本邦弘・宮古地区医師会(2018年10月11日掲載)
AUDITのススメ ~沖縄県医師会編
病気の診断や治療に、基準となる数値を利用することがあります。空腹の状態で血糖値が125mg/dlを超えたら糖尿病を疑い、自宅血圧が135/85mmHg未満を目標に高血圧の治療を行うなどがその例です。設定された基準数値は、病気の診断をし、治療目標を立て、その効果を判定する際に、医師と患者相互のコミュニケーションの手段にもなります。
さて、沖縄県は、アルコール性肝硬変など飲酒関連の病気の発生頻度が高く、関係機関が改善に向けて取り組んでいますが、十分な成果は得られてはいません。その要因として、病気の発生の予測や、発生した後の発見が遅れていることも考えられます。
飲酒関連の病気を早期に発見(数値化し目に見えるよう)できないものか。
そこで、AUDITの利用を検討してみました。AUDITとは、Alcohol Use Disorders Identification Test(アルコール使用障害特定テスト)の略語で、問題飲酒の早期発見のために世界保健機関(WHO)が作成したスクリーニングテストです。質問は10項目。各項目の回答に0点から4点の点数を与え、全体で最低は0点、最高が40点になります。合計点数が8点以上を問題飲酒者、15点以上はアルコール依存症が疑われるとします。
2015年度に宮古地区で特定健診を受けた約900名にAUDIT調査をしたところ、問題飲酒者(AUDIT8点以上)はそうでない者(同7点以下)と比べ、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肝機能異常などいわゆる生活習慣病を有する頻度が高い傾向がみられました。また、オトーリ(宮古地域の伝統的な飲酒の習慣)を有する群においてその関連が顕著でした。
早期に飲酒習慣と生活習慣病との関連性を知るために、飲酒の本来のあり方を考えるために、また、地域全体で飲酒関連の病気の早期解決を図るためにも、数値化することが可能な健診時のAUDIT調査をすすめます。