自覚症状がない糖尿病網膜症

今泉綾子・とよみ眼科(2018年8月2日掲載)

重症化の前に早期治療を ~沖縄県医師会編

 眼には網膜という視力に関係する神経の場所があります。高血糖の状態が続くと、網膜の血管がもろくなったり、詰まったりして循環障害や出血がおこり放置すると視力が落ちてしまいます。これを糖尿病網膜症といいます。


 糖尿病の人で網膜症になるのは13~23%といわれています。視覚障害の原因疾患の1位は緑内障、2位は糖尿病網膜症と推定されていて、珍しい病気ではありません。


 糖尿病網膜症は、初期・中期・末期に分けられます。初期は小さい範囲の血管が障害されて点状の出血が見られるのみですが、中期には広範囲の血管が障害され出血も増えてきます。末期になると、大出血が起きて急に視力が落ちたり、ひどい場合には網膜剥離や緑内障などほかの病気を起こしたりします。糖尿病網膜症で一番怖いのは末期になるまで自覚症状が無いことです。


 ただ、網膜の中心部分(黄斑)の血管が悪くなった場合には、時期に関係なくいつでも視力が落ちる可能性があります。黄斑浮腫といいますが末期に頻度が多いと言われています。


 治療の第一は血糖コントロールです。血糖コントロールが悪ければ、いくら眼科治療をしても効果が出ません。


 眼科治療にはレーザー治療・薬を眼に注射する治療・手術があります。


 レーザー治療は血管の詰まったところを焼いて進行を抑える治療で、視力は上げられません。薬の注射は黄斑浮腫を改善して視力を上げたり維持したりする目的ですが、黄斑浮腫はなかなか治りにくく再発もあるので注射の回数が多くなることが難点です。手術はレーザーや注射をしても病状の悪化が抑えられない場合に行います。病状がかなり進行している場合は、手術をしても日常生活を支障なくすごすための視力が回復しないこともあります。


 重症化する前に適切な治療を施せば、進行を食い止め視力障害を予防することが可能な疾患でもあります。糖尿病と診断されたら、早い段階で血糖コントロールをすること、眼科の検診を受け続けることが重要です。

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