失明の恐れも…糖尿病網膜症

山内遵秀・琉球大学医学部付属病院(2018年7月1日掲載)

定期検査を ~沖縄県医師会編

 糖尿病が引き起こす眼の病気の一つに糖尿病網膜症があります。


 糖尿病は食べ物から取り込んだ糖分が細胞内に取り込めずに血液中で過剰になります(高血糖)。この状態が続くと体中の血管が障害されます。眼には外界の映像を感知する網膜があり、よくカメラのフィルムに例えられます。網膜には多くの血管が張り巡らされ、高血糖で障害されると点状の出血を生じたり、血管にこぶが形成されたりします。これが糖尿病網膜症の始まりです。


 次に、血管障害により徐々に血流が悪くなり、網膜に異常なもろい血管(新生血管)が生じ大きな出血を引き起こします。さらにクモの巣のような膜(増殖膜)が生じ、網膜を引っ張り網膜剥離が生じます。


 その結果、重度の視力低下が起き失明の危険に直面します。また初期の段階でも血管から血液の一部が漏れ出して網膜に液体がたまり(黄斑浮腫)、中心が見えにくくなることがあります。


 治療の中心はレーザー治療です。病気の進行を抑える非常に重要な治療です。最新の治療では黄斑浮腫に対し薬剤の眼内注射をするようになっています。また大きな出血や網膜剥離は手術をしますが、機器の進歩で手術時間が短縮し合併症も減少しています。


 適切な時期に治療すれば失明はほとんどしないはずですが、糖尿病網膜症は日本の失明原因上位の疾患となっています。


 失明する方がいるのは、糖尿病も糖尿病網膜症も、初期の段階では自覚症状がなく、受診が遅れることに原因があると思われます。日常診療において、定期的な眼科検査をしていない30~60歳の方が重症な糖尿病網膜症で受診してきます。もっと早期に糖尿病を発見し眼科検査を定期的に受けていれば失明はしなかったのにと思う場面がよくあります。


 明るく楽しい人生を送るためにも、視力にかかわらず検診を受けて頂くことがわれわれ眼科医の願いです。

このページのトップへ