嫌われ者?のつえですが…
山口健・リハビリテーションクリニックやまぐち(2018年5月10日掲載)
その役割は「相棒」 ~沖縄県医師会編
日頃の診療の中でつえをすすめることがあります。この時よくある反応は「え?」と言って顔をしかめ、「年寄りみたい」というものです。
確かにエジプトのスフィンクスの謎かけでは人間のことを「朝は4本足、昼は2本足、夜になると3本足」と表現し、人は高齢になるとつえをつくことを示しています。一方、つえは古くは王様や祈とう師、ギリシャ神話の医学の神アスクレピオスなどが持っており、権威の象徴でもありました(水戸黄門もそうですよね?)。そして17世紀から20世紀初めのヨーロッパではモダンな装飾品、オシャレアイテムでした(チャップリンを思い出します)。
さて、本題です。実用的なつえの役割は足の負担を減らす、バランスを取りやすくする、歩行のリズムを作るという3つです。股関節や膝、足首の病気や背骨の変形、脳卒中などによるまひがある場合につえが勧められます。つえは関節を保護、腰痛を予防、病気の無い方の足を保護します。また、歩く時の重心移動が少なくなり、疲れにくくなります。つえによって関節の手術を避けたり、時期を遅らせたりできるかもしれません。
嫌われ者? のつえですが、最近は種類も多くさまざまなデザインがあります。昔ながらのデザインもおしゃれかも。つえ代わりに傘をついている方も見かけますが、傘は体重を支えるようには作られていません。転んだときに誤って開くと、大けがにつながりかねませんのでご注意を。
つえについて多い質問は持ち手や高さなどです。一般的には痛い足やまひした足と左右反対の手に持ち、握る部分はつえをついた状態で軽く肘が曲がる程度の高さがよいとされます。使い方はかかりつけの整形外科、リハビリテーション科の医師やデイケアの理学療法士などにご相談ください。
つえはあなたの足を、腰を守ってくれます。「転ばぬ先のつえ」という言葉もあります。早く、安全に歩くため、できるだけ長く自分の足で歩くためのパートナーとして、つえと一緒に歩いてみませんか?