脂肪や臓器が膀胱に重圧…尿失禁の一因に

山田博彦・古堅南クリニック(2018年3月9日掲載)

~沖縄県医師会編

 パンツが臭う、気が付かない間に漏れていたのか、と思った事はありませんか。自分の意志に反して尿が出てしまう事を尿失禁と言います。


 1953(昭和28)年生まれの私は幼稚園からの友人と今も交流があり、月に1度はゴルフをしています。プレー後風呂に入ると青年期の引き締まった肉体はどこへ。腹も尻も垂れ、時の流れと重力に逆らう事は出来ないと思い知らされます。体の表面だけではなく中も同じで、垂れ下がっていくようです。特に女性は閉経後、女性ホルモンの影響を受け代謝が悪くなり、ぽっちゃり体形になりやすく、内臓脂肪が増えて膀胱(ぼうこう)や子宮に重くのしかかってきます。


 骨盤を上からのぞいて見ると大きな穴になっていて、この部分をふさぐように数種類の筋肉から作られる強靭(きょうじん)な筋層が穴をふさいでいます。その筋層の中に尿生殖隔膜という組織があり、尿道や膣がその中を通っています。尿道の周りにも筋肉があり骨盤の底を支えている筋層と力を合わせて漏れないように頑張っています。お産を経験したり、内蔵の大きな手術を受けたり、太って重くのしかかっている脂肪や臓器の重圧に耐えきれなくなると、笑った時やせきをした時、重いものを持ち上げる時に、おなかに力が入るとチョロっと漏れてしまう事があります。これが多くの女性を悩ましている腹圧性尿失禁です。


 トイレに行こうと思うと、我慢する事が難しくなり、下着を脱ぐか脱がないかのうちに尿が出てしまう経験はありませんか。このタイプは切迫性尿失禁です。女性の膀胱炎、男性の尿道炎や前立腺炎でも見られる症状です。他に溢流性尿失禁、機能性尿失禁、反射性尿失禁、尿道外尿失禁などがあります。


 診断では尿失禁が起きるタイミング、出産歴や骨盤内手術の有無、内服薬等の説明をしてもらい、尿失禁が日常生活にどう影響を与えているのかを考えていきます。


 クリニックでできる検査は排尿日記を付けてもらい、エコー検査で膀胱の状態や残尿の有無を診ることです。基幹病院などでは筋電図等を用いて筋肉の状態等を診る精密検査が受けられます。


 治療は運動療法、薬物療法、手術療法などがありますが私のお勧めは運動療法での骨盤底筋体操です。その方法は肛門の筋肉をきゅっと締めて五つ数えるだけ。これを1セットとして1日に10~20回行って下さい。ただし簡単には筋肉は強くなりません。4~5カ月続ける必要があります。男性にも効果があるので、すぐに始めてみましょう。詳しい事は近隣の泌尿器科で相談してください。沖縄には、すてきな泌尿器科の先生がいっぱいいますよ。

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