「新たな国民病」CKDとは…

知念さおり・徳山クリニック(2018年2月2日掲載)

あなたの腎臓は大丈夫?

 「元気なのに検診でCKD(慢性腎臓病)といわれた」「なぜ腎臓が悪くなったの? 治りますか?」。外来を訪れる方から腎臓に関する質問を多く受けます。CKDの患者さんは日本の成人の8人に1人とされ新たな国民病ともいわれる身近な病気です。あなたの腎臓は大丈夫ですか?


 腎臓の働きは尿を作ることです。老廃物を体外へ捨てる、水分や電解質を調整する、血圧を調整する以外に赤血球を作る、骨を強くする働きもしています。腎臓の働きが低下すると体の正常な状態は維持できず、心臓や脳血管障害を合併しやすく、腸内環境も悪化、骨折しやすいといわれています。


 腎臓の病気は急性と慢性に分けられ、急性は強い自覚症状を伴うことが多いため自分で病院を受診し治療が始まります。一方ゆっくり進行するCKDは初期にほとんど自覚症状がありません。だるさやむくみなどの体調不良に気付いたときは病気がかなり進行している場合があります。腎臓の働きを知るには尿と血液検査を受ける必要があります。たんぱく尿または血尿が陽性、血液のクレアチニン値から計算する腎臓の働き(糸球体ろ過量・eGFR)が60ml/分/1・73平方メートル未満の状態が3カ月以上持続するとCKDとされます。では腎臓が悪くなる原因にはどんなものがあるでしょうか?


 まず加齢です。腎臓は血液から尿を作り出すために発達した細かい血管でできた臓器で、加齢による動脈硬化の影響を強く受けます。40歳以降徐々に低下し、70歳には若者の70%ほどの腎機能となります。その上に遺伝、腎臓病にかかったことがある、繰り返す脱水や感染症、尿路結石、痛み止め等薬剤の影響、糸球体腎炎の他、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、高尿酸血症、喫煙、肥満やメタボリック症候群などの生活習慣病が加わると急速に腎臓の働きが低下してしまうのです。残念ながら低下した腎臓の働きを元に戻すことはできません。うまく働かなくなる(eGFR15以下)と腎臓の替わりをしてくれる腎代替療法(透析や腎移植)が必要になります。日本の透析医療は世界一と言われますが、元気な腎臓にはかないません。


 腎臓を守るためには喫煙せず、適正な体重(BMI25以下)を維持し、痛み止めは最小限に、なにより腎臓の状態を定期的に検査しましょう。生活習慣病を治療する事で腎機能低下の進行を遅らせることができます。腎臓の状態は人によって異なり、同じ人でも進行具合によって内服薬、食事療法が変わるため最適な治療を選択するには1度腎臓内科外来受診をお勧めします。

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