貧血の原因はいろいろ

西平守樹・西平医院(2017年12月29日掲載)

内科医と相談し適切な治療を ~沖縄県医師会編

 血液の中には、赤血球、白血球、血小板の三つの血球がある。赤血球は体全体(心臓、脳等々)に酸素を運ぶ働きがある。白血球は体外から入った菌に対応したり、体内でのいろんな炎症に対応したりする。血小板は止血に携わっている。その中で赤血球が少なくなった状態を貧血という。貧血にはいろんな原因があり、最も多いのは確かに鉄欠乏性貧血だろう。だがそれ以外にもさまざまな貧血がある。


 血液は、その製造工場の役割を担っている骨髄という骨の中で造られている。この工場が働かなくなった状態になると赤血球、白血球、血小板が造られなくなってしまう。これを再生不良性貧血という。


 工場によそものが入り込んだ状態でも、血球は造られにくくなる。例えば、がんが骨髄に転移して、がん細胞に占拠された場合でも血球を造る工場は閉鎖状態となる。骨髄が線維化した場合も骨髄は働かず、血球は造られない。


 工場に材料が搬入されない場合も貧血になる。例えば赤血球の材料に最も大切な材料は鉄だが、生理のある女性は、毎月の生理での出血が原因で、材料である鉄が少なくなってしまい貧血となる。


 一方で生理のない更年期以降の女性や男性の鉄欠乏のほとんどは、消化管からの失血が原因だ。これらの方が、鉄欠乏になったら、消化管の検査が必要となる。潰瘍やポリープ、憩室、がん等、さまざまな病気の可能性がある。


 鉄欠乏性貧血のうち、特に小児期の鉄欠乏の原因としてピロリ菌への感染がある。この場合は鉄は十分あるが、それを利用できない状態になっている。ピロリ菌だけでなくさまざまな炎症の場合に鉄の利用ができないことがある。材料の不足の中には亜鉛、銅等の不足もあるが、これはまれなケースだ。


 材料も工場もしっかりしているのに、その工場を稼働させる電気や労働力の低下による貧血もある。ビタミンB12、葉酸等の不足でも同様の事が起きる。


 最後に、急激な貧血として、出血による失血がある。最も多いのは消化管からの失血。他にのうほう内の出血等だ。発作性血色素尿症など、いろいろな場所からの失血がある。


 貧血というのは、よく耳にする言葉だが、その原因は多岐にわたる。頭から、鉄分だけを補充すれば良いと決めつけず、内科医などと良く相談して、最も適した治療を行ってください。


 赤血球は全身に酸素を運びます。もちろん脳みそにも…。貧血が良くなると頭の働きも良くなります。

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