当事者の状況把握が重要

小渡稚子・平和病院(2017年12月15日掲載)

性別の違和(性同一性障がい) ~沖縄県医師会編

 性別違和(性同一性障害)に悩む人は孤独感や恥、恐れ、社会的被差別感、職場での困難、罪の意識など多くの問題を抱えています。


 性別違和は、性同一性(自分がどちらの性別に属しているという感覚)と性役割(社会で男性的、女性的とみなされている行為、振る舞いを指します)が一致していないことが本質的な問題です。


 性別の違和の原因は今のところ分かっていません。性別違和の結果、みられる症状は大きく三つに分けられます。


 一つ目は反対の性別に強くひかれます。男の子の場合、女の子と遊んだり、女の子の格好を望んだりします。女の子はズボンを好み、活発で男の子の遊びを好みます。


 二つ目は自分の身体的な性別特徴を強く嫌います。例えば男性なら男性を象徴するひげ、体毛などです。女性の場合は乳房の膨らみや生理、体つきが丸みをおびることを嫌い、胸にバンドを巻いて乳房の膨らみを隠したり、男性ホルモンを打って月経を止めたり、体つきを変えることを試みます。


 三つ目は、日常生活で反対の性別役割をとろうとします。家、学校、職場などの社会の中で反対の性別として行動したり義務を果たしたり、言葉遣いや身のこなし、しぐさもすべて反対の性別の性役割をとることを望みそのように実行します。


 これらのことは、自分の持つ性別の意識に合わせようとするためだと考えると理解できます。中には性別に対する違和感のために深刻な抑うつ状態になる当事者もいます。性の自己認知は人によって程度がさまざまで、性別違和を抱えていても、そのまま日常生活を送ることができる方もいれば、服装を反対の性別のそれに変えるだけで安定する人、外科的治療を望む人などそれぞれです。


 また性別に対する嫌悪感を確固として持っている当事者もいますが、揺れ動く人もいます。


 男性の特徴としては発症時期、症状、経過がさまざまです。成人すると外見が反対の性と通用すると思っていない方も多く、反対の性に対する同一感は持ちにくいようで、社会適応が女性より困難なことがあります。ホルモン療法や外科療法をしたことを後悔する可能性もあるので、診断と治療には慎重な対応が必要です。


診断、カウンセリング、治療は当事者の置かれた状況や環境、治療上の問題点を把握する必要があり、日本精神神経学会の作成する指針に基づくガイドラインに従って行っています。治療は正確な診断が求められ、詳細な本人の情報を自覚的、他覚的に聴取することから始まります。

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