体力に合った練習を

林宗幸・ロクト整形外科クリニック(2017年12月2日掲載)

成長期のスポーツ障害・疲労骨折 ~沖縄県医師会編

 疲労骨折は、外傷性骨折のように1回の強力な外力により起こる骨折とは異なり、同じ部位に軽微な外力が繰り返しかかることで起こるスポーツ障害の一つです。


 スポーツを開始する時期の低年齢化や老若男女多くの方々がスポーツを身近に行うようになったことで、疲労骨折の発生は増加傾向にあります。10代前半から発症し各年代に幅広く見られますが、発症しやすい年齢は16歳ごろがピークとなっています。


 発生部位では、下肢での発症が多く、特に脛骨(けいこつ)(すねの骨)や中足骨(足の甲の部分)に多く、半数以上を占めています。最近では腰椎の疲労骨折も多く見られるようになってきました。症状として運動時の痛みがあり、疲労骨折部に限局した圧痛が認められます。


 検査としてレントゲン撮影を行いますが、発症初期には明らかな所見がなく2~3週間後に再度撮影を行う場合もあります。またレントゲン撮影で不明瞭な場合にはMRIで早期の診断を行っています。治療の原則は局所の安静で、痛みの出る動作などの運動は禁止。しかし、再骨折や治療開始まで時間を要することで骨癒合が遅い場合には手術が必要となることもあります。治療には数カ月かかることが多いため、患部以外のストレッチや筋トレなどを積極的に行い競技にスムーズに復帰できる準備をしておくことも重要です。


 患者さんの多くが中学、高校生です。運動開始の低年齢化で、中高生のスポーツの内容がかなり専門化してきています。大会前に疲労骨折を起こしてしまうと、長期間競技から離れなければならなくなり競技レベルを維持することが難しくなります。また早期の復帰を焦るあまりに中途半端な運動制限や治療の自己中断により、治療が長期化することがあります。そのため早期の診断と治療開始が大切になってきます。


 疲労骨折を予防することも重要です。全身の筋力の強化や関節、筋肉の柔軟性獲得のためのトレーニングやストレッチをしっかりと行うこと、ランニングフォームや投球動作などが正しく行えているか確認することが必要です。


 運動量の急激な増加にも注意が必要です。特に成長期では個人の発育に差があるため。おのおのの体格、体力に合った個別のトレーニング調整も必要です。指導者を含めチーム全体で練習、トレーニングの内容を検討することも大切です。


 オーバーユースの延長線上に疲労骨折があります。外傷がなく痛みが出現した場合には疲労骨折の可能性も考えて、早めに検査を受けてみましょう。

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