日進月歩で選択肢増える

伊良波史朗/県立南部医療センター・こども医療センター(2017年11月17日掲載)

放射線治療の種類と方法 ~沖縄県医師会編

 放射線治療とは放射線を利用し、がん細胞の遺伝子を破壊、がんの増殖を抑え、がんの消失をはかる治療です。がんを縮小-消失を目的とする根治的治療と、骨転移や脳転移などによる痛みや神経症状の改善を目的とする緩和的治療の2種類があります。


 体表から患部を狙う治療なので手術とは異なり体に傷ができない治療なのが特徴です。また、がんの形状が小さいほど治療範囲も縮小されます。


 放射線はがんを死滅させる効果があり、その効果は放射線量に比例します。


 同時に正常な組織にも副作用がおこる事があります。皮膚に照射されると皮膚炎が出現したり、頭部に照射されると一時的に脱毛が見られたり、照射される部位により副作用が異なります。


 主な放射線治療として、外照射法、密封小線源療法(組織内照射法)があります。


 外照射法は身体の外からがんに対して放射線を照射する方法で、密封小線源療法(組織内照射法)は小さな粒状の容器に放射線を発する物質を密封し臓器に直接埋め込み体の内側から治療する方法です。


 放射線治療で大部分を占める治療が前述した外照射法です。ここ十数年で一般的な外照射法に加え、強度変調放射線治療、定位的放射線治療(ピンポイント治療)といった手技が可能となりました。


 強度変調放射線治療は、一般的な外照射法と比べ、がんそのものへの放射線集中を高め、周囲の正常臓器への放射線量を極力低下させ副作用を減少させる治療です。


 コンピューター機器の発達に伴い、放射線量の強弱をコントロールできるようになって初めて可能となった治療手技です。当院では多発脳転移の治療等に施行しています。


 定位的放射線治療は、近年マスコミでもよく紹介されており、ピンポイント治療とも呼ばれています。肺がんや脳腫瘍、肝がんなどに主に用いられ多数の放射線ビームをいろんな方向からピンポイントに集中させて、がんを治療します。


 現在、デバイスの発達や新知見なども相まって急速に進歩している放射線治療ですが、新たな放射線治療として重粒子・陽子線治療があります。正常組織への影響を抑え、がん治療する先端医療ですが、医療保険適応が限定的で治療費が高額な点、また、治療が受けられる施設が限定的な点などの難点はありますが、がんの放射線治療として新たな選択肢の一つとなっています。

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