プールに行ってないけど…
新垣義清・まちなと小児クリニック(2017年10月27日掲載)
感染に注意、子どものプール熱 ~沖縄県医師会編
「プール熱ですね」「うちの子はプールには行っていませんけど?」
けげんそうな母親の顔。毎年のように繰り返される会話です。今年もプール熱が流行しています。正式名称は「咽頭結膜熱」、アデノウイルスの感染症の一種です。
アデノは50種以上の型に分けられ、さまざまな症状が出ます。赤ワイン色の血尿が4~5日続く出血性膀胱炎や肺炎、嘔吐や下痢などの胃腸炎を起こす型もあります。このアデノウイルス感染症の代表的なものがプール熱です。
最初プールで集団発生が報告されたため、この名が広く知られるようになりました。夏場に多く、7~8月が発生のピークになっています。突然の高熱で発症し、せきや鼻水など風邪症状がみられることもあります。扁桃に小さな白い膿(うみ)がついていたり、赤く充血した目になったりします。症状は個人差があり全部がそろわない子もよくいます。
発熱だけの場合、診断に苦慮することがあります。感染経路としてはプールなどの水を介しての感染、せきやくしゃみなどからの飛沫感染があります。アデノウイルスに効く薬はありません。目の炎症を抑えるため点眼薬が処方されます。目の症状がひどいときは眼科へ紹介することもあります。
患者の8割は5歳以下の小児ですが成人の感染もあります。高熱にもかかわらず患児は比較的元気で、数日後には平熱に戻ります。
アデノウイルス感染のもう一つの目の病気に流行性角結膜炎(はやり目)があります。はやり目は結膜(白目)だけでなく角膜(黒目)にも炎症を起こすため、目ヤニがひどく眼を開けられない状態になったりします。また目の痛みやまぶたの腫れ、涙が止まらなくなったりすることもあります。
プール熱はアデノの3型、4型、7型などでおこりますが、はやり目は8型、19型、37型が原因ウイルスとなります。
アデノウイルスの外来での診断はキット検査が有用で、10分くらいで結果がでます。しかしキット検査では型の区別はできませんので、目の症状がひどく鑑別が必要な時は眼科受診が望まれます。
アデノウイルスは非常に感染力が強く有効な薬もないため予防が重要です。予防法としては、プールに入る前後のシャワー、タオルの共用を避ける、感染している場合には風呂は最後に入るなどが必要です。飛沫感染を防ぐために、ドアのノブや集団で遊ぶ時のおもちゃなどはアルコールや次亜塩素酸ナトリウム等で消毒することも必要になってきます。