知っていますか?
薬師崇・うるまこころのクリニック(2017年10月6日掲載)
適応障害とその対処法 ~沖縄県医師会編
適応障害という病名をご存じでしょうか? はっきりと確認できるストレス因に反応して感情や行動面の症状が出現するメンタルの病気です。ストレス因としては、学校や家庭内での人間関係、進学、就職、恋愛関係、結婚や離婚などさまざまなものが当てはまります。
米国の調査では、精神科治療を受けている人のうち、適応障害と診断をされる人の割合は、およそ5~20%であるといわれています。誰でもなりうるといえるでしょう。
症状としては、抑うつ気分(気持ちの落ちこみ、涙もろさなど)、不安感、素行の障害(遅刻、欠勤など)があります。睡眠の問題(寝つきが悪い、途中で目が覚める、熟睡できない、寝すぎてしまう)、頭痛や疲れやすいといった身体の症状をともなうことが多いです。うつ状態や不安状態になるものの、うつ病や不安障害といった病気とまで言えるほどではないとされていますが、実際の区別は簡単ではありません。早めに対応し、うつ病や不安障害といった他の病気に進行しないようにしていただきたいと思います。
治療としては、ストレス因をはっきりさせることからはじめます。少し落ち着いて考えてみることが重要です。たとえつらい状況であっても、腹式呼吸やストレッチを行い、その状況をそのまま受けいれるということができると、かえって好転しやすいものです。頭の中で考えるだけでなく、信頼できる人に悩みを打ち明けてみることや、ノートに書き出してみると問題点が整理されることが多いです。
ストレス因の受け止め方やとらえ方を、より柔軟・現実的なものにしてみることも有効です(認知療法的アプローチ)。例えば「与えられた仕事は必ず自分で行わなければならない」という考えだけにこだわるとつらいものです。「今の自分にはここまでできるが、できない部分は他の誰かに相談をしよう」などのように、他の考え方もできることを見つけるとずいぶん楽になるのではないでしょうか。
そのうえで解決に向けてなんらかの行動を起こすことがより効果的だと考えられます(行動療法的アプローチ)。上司や同僚に相談をして、わからない部分を素直に教えてもらうことや、仕事量の軽減、内容そのものを変えてもらうこともよいでしょう。
症状が強い場合には、抗うつ薬、抗不安薬や睡眠薬などを処方することもあります。抗不安薬や睡眠薬は抗うつ薬よりもやめにくい(依存性)といった特徴がありますので、主治医と相談をしながら治療を行ってください。