酒の「ほどほど」どれぐらい?
福治康秀・国立病院機構琉球病院(2017年8月11日掲載)
適正飲酒のススメ
「酒は百薬の長」と良く聞きますが、本当でしょうか? 「お酒はほどほどに」もよく聞きますが「ほどほど」とはいったいどれぐらいの量でしょうか?
厚生労働省が明確な基準を三つ作っています。少し硬い表現ですが、(1)節度ある適度な飲酒(2)生活習慣病のリスクを高める量(3)多量飲酒-です。三つの基準を信号機の色に例えて説明します。
「節度ある適度な飲酒」を超えて飲酒すると寿命が縮む事が明らかになっています。65歳未満の男性で、生活習慣病がない場合、純アルコール20グラムまで。具体的にはビールで500ミリリットル、泡盛で約0・5合になります。(女性や65歳以上の方、生活習慣病のある方は、今説明した量の半分が基準です)さらに、休肝日を週2日作るというのが基準。節度ある適度な飲酒が守れていれば、青信号です。しかし、お酒を飲む方にとっては、かなり少なく感じるのではないでしょうか?
「生活習慣病のリスクを高める量」は、純アルコール40グラム、つまりビール千ミリリットル、泡盛約1合です。この基準を超えて飲み続けていると、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を発病する可能性が高くなります。いわば黄色信号です。
最後の「多量飲酒」は、純アルコール60グラムです。ビール1500ミリリットルあるいは泡盛約1・5合相当。これを超えると赤信号。
お酒が直接・間接的に原因となり、病気やけがで入院する人の多くは、この多量飲酒をしている方たちです。2014年度に県が行った飲酒調査では、県民の1回飲酒量の平均が純アルコール69グラムという驚くべき結果でした。沖縄県のアルコール性肝疾患による死亡率が全国平均の約2倍という数字も、これならうなづけます。
このコラムを読んで自分のお酒の飲み方が黄や赤信号だった方も諦めないでください。まず「このぐらい大丈夫」「酒は百薬の長」という都合のいい言葉を捨て、冷静に自分の飲酒量の現実を見てください。
慌てて無理にお酒を止めたり、減らしたりする必要もありません。無理なダイエットや運動が失敗するのと同じです。
まずできるところから始めてみましょう。缶ビールを500ミリリットルから350ミリリットルへ変えてみる、泡盛の度数を30度から25度に変えてみる、休肝日を今より月1回増やす、などはいかがでしょう?
また沖縄県が節酒のためのアプリを開発しています。興味のある方はWebで「うちなー 節酒カレンダー」で検索してみてください。