肩こりやしびれに悩まされていませんか?
宮里剛行・ロクト整形外科クリニック(2017年8月4日掲載)
常に気を張り詰めて忙しいスケジュールをこなしている皆さん。肩こりやしびれに悩まされていませんか。うつむき加減で肩をすぼめて作業したり重い荷物を持って腕を引っ張られたりして、肩の周辺から上肢にかけて痛みやしびれが起こる場合には、胸郭出口症候群(TOS)が疑われます。
TOSは胸郭の出口の第1肋骨(ろっこつ)、鎖骨、斜角筋で、上肢への神経や動静脈が圧迫や牽引(けんいん)や摩擦されることにより痛みやしびれを起こす疾患です。大部分が神経性であり原因により牽引型と圧迫型に分かれます。
牽引型は特になで肩で猫背になりがちな若い女性に多くみられます。両肩を上げて胸を張って腕を持ち上げる姿勢をとり牽引を緩めれば症状が軽くなります。一方圧迫型は筋骨隆々な怒り肩の男性に多くおこります。バスやモノレールのつり革につかまっていると腕が重くなりしびれるなど、腕をあげる姿勢で神経や血管が圧迫されて症状が出てきます。これらの牽引や圧迫の両方の症状を持っている人も多くいます。ひどい時には腕の症状に加え後頭部から背中の痛みや手指のうっ血・蒼白(そうはく)や全身倦怠(けんたい)感を起こすこともあります。
TOSは姿勢を正して牽引や圧迫負荷がなくなると治ってしまう可逆的な障害であるため、神経伝導速度など電気生理学的検査やX線・CT・MRIなどの画像診断では確定診断できません。胸郭出口での電撃痛の部位や、上肢の下方牽引でのしびれの再現や挙上でのしびれの消失で臨床的に診断します。ただTOSと同様な症状は、日常で多くみられる頸椎(けいつい)疾患や手根管症候群などの頸椎や上肢での神経圧迫でも起こります。そこでまず電気生理学的検査や画像診断でそれらの疾患があるか確認し、ないとなればTOSを疑います。また難しいことにこれら疾患はTOSと併発することがあり一つを診断しても油断はできません。ある方は手のしびれがあり神経伝導速度で手根管症候群を認め治療しましたが完治せず、TOSの治療を併用して続けると良くなりました。
治療で大事なことは症状悪化の動作や姿勢を控えることです。リハビリで「牽引型」では肩甲帯周囲筋を強化して猫背の姿勢を矯正し、症状が強ければ臨時で装具を装着します。「圧迫型」では手を挙げるなど症状悪化動作を控えさせ筋緊張を緩和させます。その他には神経ブロックや手術を行うこともあります。
仕事中に肩こりやしびれを感じれば、一息ついて胸を張って猫背を矯正し、腕を上げ続けないようにしましょう。それでも調子が悪ければ最寄りの整形外科外来でご相談下さい。