帯状疱疹

園崎哲・北部地区医師会病院(2017年7月14日掲載)

体片側だけ痛みに要注意 ~沖縄県医師会編

 夏になると出るものと言えば、蚊と幽霊でしょうか。幽霊のなかでも、四谷怪談のお岩さんは片側の額とまぶたが赤黒く腫れたイメージでよく知られています。このお岩さん像は帯状疱疹(ほうしん)という病気をモデルに創作されたのではないかと考える皮膚科医は私だけではありません。


 帯状疱疹はヘルペスウイルス感染症の一つです。ヘルペスと聞くと性感染症と思われる方もいるかもしれませんが、ヘルペスウイルスのなかでも水痘帯状疱疹ウイルスが原因で、水痘患者さんのウイルスが空気中を漂い、それを吸い込んでしまうことなどで感染します。水痘帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、発熱とともに全身に水疱(すいほう)が出現し、これが水痘(すいとう=みずぼうそうのこと)と言われます。水痘が治ってもウイルスは神経の中にいつまでも潜んでいます。そして病気や疲労をきっかけに潜んでいたウイルスが再び増殖し帯状疱疹を発症します。成人の多くはすでに水痘帯状疱疹ウイルスに感染しており、80歳までに3人に1人は帯状疱疹になると言われています。発症するのは通常は一生に1度だけです。


 体の片側の皮膚に発赤、水疱、痛みがみられるのが特徴ですが、見た目に異常がなくても痛みだけが先に出現することもあり、この場合は診断が難しくなります。帯状疱疹は全身に発症しますが、お岩さんのようなまぶたと額は特に発症しやすい部位の一つであり、顔面神経まひや動眼神経まひ、脳炎といった合併症が起こりやすい部位でもあります。


 帯状疱疹でもウイルスが他人に感染する可能性はあります。仮におじいさんに帯状疱疹が発症したとして、その妻や成人した子はあまり心配ありません。しかし若年者では水痘未感染の方が増えており、水痘未感染の妊婦や予防接種を受けていないお孫さんがいる場合は接触を避けた方がよいでしょう。


 帯状疱疹の後遺症で、帯状疱疹後神経痛といって帯状疱疹が見た目には治っても長期間痛みなどが残ることがあります。特に高齢者や治療が遅れた場合は痛みが残りやすいので、早めの治療が必要です。水痘帯状疱疹ウイルスの増殖を防ぐ薬は皮疹出現後3日以内に服用することが望ましいとされますが、3日以内に受診する方は半数足らずです。もし体の片側だけに痛みや水疱、紅斑を認めたら、帯状疱疹を疑って早めに医療機関を受診しましょう。


 また条件にもよりますが、50歳以上の方には帯状疱疹の発症頻度を下げる予防接種もありますので、希望される方は医療機関に相談してください。

このページのトップへ