つらい生理痛、我慢は禁物
徳嶺辰彦・大浜第一病院(2017年6月30日掲載)
3人に1人が治療対象 ~沖縄県医師会編
毎月やってくる生理、その時に起こる生理痛は全くない人もいれば、とてもひどい人もいます。痛み止めを飲まないと我慢できない、生理痛のために仕事を休んでしまうなど日常生活に支障がでる場合を「月経困難症」といい治療の対象となります。日本では働く女性2600万人のうち800万~1千万人(3人に1人くらい)に月経困難症があるといわれています。大勢の方が困っているにもかかわらず、治療を受けている人はわずか10%しかいません。たいていの人は市販の痛み止めを飲んだりして我慢しているのです。
月経困難症を引き起こす病気の代表に「子宮内膜症」があります。本来は子宮の中にあるはずの子宮内膜が子宮の外で増殖する病気で、徐々に進行します。子宮内膜症が卵巣にできたものをチョコレート嚢胞(のうほう)といいます。おいしそうな名前ですがあまりいいものではなく、チョコレート嚢胞は卵巣がんに変わることもあります。また不妊症の方の多くは子宮内膜症を持っており、子宮内膜症を放っておくと将来妊娠しにくくなる可能性があります。
子宮内膜症の治療はピルなどのホルモン治療と手術治療が主体です。ホルモン治療を行うことで生理痛が軽くなり、さらに病気の進行を遅らせることができます。また子宮内膜症がない人でも生理痛がひどい人はホルモン治療をすることで将来子宮内膜症になるのを防ぐと言われています。
手術治療は腹腔(ふくくう)鏡下手術といって小さな傷で行う手術が推奨されています。腹腔鏡下手術は患者さんへの負担が少なく、入院が短い、元気になるのが早いなどのメリットがあります。ただし高度な技術が必要なので信頼できる医師・病院で行うことをお勧めします。
生理痛は他人と比べることができないので自分が正常なのか異常なのか、なかなかわかりません。生理痛が年々ひどくなる、セックスや排便時に痛みがあるなどの症状があれば子宮内膜症のサインかもしれません。
子宮内膜症は早期に診断、治療することで上手にコントロールできる病気です。
婦人科を受診するのは抵抗があるかもしれませんが、自分の体のケアには大事なことです。婦人科医は女性の体のプロフェッショナルです。痛みのために大事な仕事に支障が出たり、妊娠を諦めたりしないように早めに相談し、信頼できるかかりつけの婦人科医を探してみてください。
この記事を読んだ方で、周りの家族や友達、恋人が生理痛で苦しんでいる場合は婦人科を受診するよう勧めてみてくださいね。