においがわからない?
嘉数光雄・かかず耳鼻咽喉科クリニック(2017年5月19日掲載)
嗅覚障害は早めの診断と治療を ~沖縄県医師会編
最近、においがわからないということはありませんか? もののにおいを感じられなくなる嗅覚障害は、風邪やインフルエンザ、春先の花粉症、アレルギー性鼻炎などがきっかけでおこることがあります。
においが感じられないと腐敗した食べ物の判断ができなくなったり、ガス漏れに気づかないなど大変なこともあるでしょう。また、味覚の障害も同時に起きやすく、食欲も落ちてしまいます。
嗅覚は私たちが安全で豊かな生活を送るための必要な感覚です。
においを感じるためには、主に三つの段階があります。
- (1)においの素(もと)を鼻で吸い込むことによって鼻の奥に届くこと
- (2)鼻の奥にある嗅覚センサーがにおいの素に反応すること
- (3)脳で、においの内容を分析、判断すること
このいずれかの段階で障害が起こると嗅覚障害が起こります。代表的な病気には、(1)の障害ではアレルギー性鼻炎、副鼻腔(ふくびくう)炎、鼻中隔弯曲(びちゅうかくわんきょく)症、肥厚(ひこう)性鼻炎など鼻閉をおこす鼻の病気がほとんどです。(2)の障害では風邪などのウイルス性の感染で起こるもの、また、シンナーやガスなどの有害物質、一部の抗がん剤などで起こる場合です。(3)は頭部外傷、脳腫瘍、脳梗塞、アルツハイマーやパーキンソン病などの病気です。その他に、亜鉛の摂取不足や加齢、原因不明の場合もあります。
嗅覚はひとたび鈍くなると回復に時間がかかるため、早めの診断と治療が大切です。
耳鼻科では、まず鼻の中に異常がないか、鼻鏡をもちいて診察したり、場合によってはさらに詳しくみたりするため腔内視鏡検査を行います。嗅覚障害の程度をみるために、アリナミンテストというにおいの検査を行います。アリナミンは、特有のにんにく臭のするビタミンB1製剤で、これを静脈注射して実際に臭いを感じ始めるまでの時間と、臭いを感じている時間の両方を計り、判断します。また、鼻の病気がないか、エックス線やCT検査を行います。さらに脳のMRI検査が必要となることもあります。
治療としては、原因となる鼻の病気の治療と並行して、ステロイドの点鼻薬や内服、漢方薬、ビタミンB12や亜鉛の入った薬を服用していただくこともあります。
原因や治療の開始時期によっては、改善することが難しいこともありますが、いずれにしても、早めに治療を開始することが、嗅覚障害を直すポイントです。
最近になって、においがわかりにくいなどの嗅覚障害があれば、早めに、お近くの耳鼻科で相談されることをお勧めします。