その症状、逆流性食道炎では?
城間丈二・城間医院(2017年5月5日掲載)
~沖縄県医師会編
皆さんの中で胸がムカムカしたり、苦汁が上がる、喉が詰まった感じがする、ゲップが多いなどの症状に苦しめられている方はいらっしゃるでしょうか。それらは逆流性食道炎が原因かもしれません。
私たちが食べたものは口から食道を通過し、胃に入ります。本来、食道と胃のつなぎ目は食べ物が通過する時以外はしっかり閉じた状態なのですが、このつなぎ目が何らかの理由により緩んでしまい、胃で分泌された胃酸が食道に逆流するのです。胃と違って食道は胃酸に弱いため、逆流した胃酸が食道粘膜を侵してしまうのです。その結果、冒頭の症状が出現するのです。
下部食道括約筋という筋肉が管状の食道を取り巻いて食道と胃のつなぎ目を締めたり緩めたりするのですが、年齢を重ねるとこの筋肉の力が弱くなります(一部のお薬でもそのような作用があります)。また胸とおなかの間にある横隔膜には食道が通るための隙間がありますが、これも加齢で緩くなり、胃の一部が胸部へ飛び出し胃酸が逆流しやすくなります。さらに胃の内圧が上昇することでも胃酸が逆流しやすくなるため、肥満や妊娠、おなかをベルトなどで締め付けると胃酸が逆流しやすくなります。また油っこい食べ物やお酒、コーヒーなどは胃酸分泌を増やします。
この疾患は日本人にはもともと少なかったのですが、食生活の欧米化や肥満の増加、また胃酸分泌を障害するピロリ菌の感染率減少などに加え、高齢化社会になってきたこともあり増えてきました。内視鏡検査での有病率は1980年代には2%台だったのが、2005年には15%近くまで増加しています(日本消化器病学会)。
内視鏡検査で食道粘膜の炎症を確認できれば逆流性食道炎と診断できます。しかし粘膜に炎症のない方もおり、その際は問診から胃酸逆流を疑って同じ治療を行うことになります。まず肥満の解消や高脂肪食を控えることはもちろん、食事はよくかんでゆっくり味わう、量も腹八分で抑える、食後すぐに横にならない、飲酒量を控える、服で体を締め付けない、など普段の生活で気を付けてもらいます。また胃酸は夜間就寝中に逆流しやすく酸の力も強くなることから、眠る時は大きめの枕を使って肩から頭の位置が高くなるようにする工夫も有効です。それと同時に胃酸分泌を抑えるお薬を内服することにより、ほぼすべての人で症状が消失あるいはかなり軽減されています。
普段から胸焼けなどに悩まされている方は、ぜひお近くの病院で相談されてみたほうがいいでしょう。