長袖と長ズボンで防御

金森志奈子・那覇かなぐすく皮膚科(2017年4月21日掲載)

毛虫皮膚炎に注意を ~沖縄県医師会編

 気温が上がり屋外活動が増えてくる春から夏にかけて、例年多くみられるのが毛虫皮膚炎です。シーミー(清明祭)の準備でお墓周りの掃除をした後からかゆくなったという方や、植木鉢の手入れでかゆくなった小学生のお子さん、遠足の後からかゆがっているという保育園のお子さんまで、屋外活動の増加とともに幅広い年齢層において毛虫による皮膚炎が見られます。


 チョウやガの幼虫の中で、有毒毛を有するものに触れることで生じる皮膚炎を毛虫皮膚炎といいます。有毒毛には毒針毛(どくしんもう)と毒棘があり、前者はドクガ類やカレハガ類に、後者はイラガ類の幼虫に認められます。


 ドクガの幼虫は時々大発生するので特に注意が必要です。ドクガ類の幼虫の体表には前述の毒針毛とよばれる0・1ミリほどのとても小さな毛が無数にあります。1本1本を肉眼的に確認することはできません。毒針毛には分子量2~4万の抗原性物質が含まれていて、皮膚に突き刺さって中の毒成分が皮膚に入りアレルギー反応が関与して皮膚炎となります。


 症状としては個人差があり、毒針毛に触れてすぐに蕁麻疹(じんましん)や、蚊に刺されたようなふくらみが出現する場合(即時型反応)、時間の経過とともにはっきりと赤くぶつぶつとした発疹が集中し、周囲にぽつぽつとした部分が見られる場合(遅延型反応)があり、強いかゆみを伴うのが特徴です。


 部位的には、首や腕などの、衣類でおおわれていなかった部位に出ることが多いです。しかしながら、外に干していた洗濯物に毛虫そのものや風で飛んできた毒針毛がついていたりすると、衣類でかくれている腹部や背部にも発疹が出てきます。


 もし明らかに毛虫に触れてしまったと気がついたら、かかないようにして、触れた場所に粘着テープをはったりはがしたりして毒針毛を取り除きます。そしてシャワーで丁寧に洗い流しましょう。


 沖縄でよく発生するタイワンキドクガの幼虫は、街路樹や公園樹によくあるモモタマナ(別名:コバテイシ、方言名:クワディーサー)を好みます。発生している樹木に近づかないこと、屋外活動のときは長袖や長ズボンなどを着用し、できるだけ皮膚の露出を抑えましょう。


 毛虫に触れた自覚が無い場合でも屋外活動後の皮膚炎は飛散した毒針毛による毛虫皮膚炎と推定される場合も多いです。かゆい発疹が多発している場合にはステロイド軟膏外用治療が必要となりますので、症状がひどいときは病院を受診しましょう。

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