前立腺がんの放射線治療

戸板孝文・琉球大学医学部付属病院(2017年2月24日掲載)

後遺症少なく完治可能 ~沖縄県医師会編

 前立腺がんは男性に特有のがんの一つです。なかなか症状がでにくいため、以前は進行した状態で見つかることが多いがんでした。しかし最近では、人間ドックなどの血液検査で腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)の異常値により、症状のない早期がんで発見されることが増えています。


 前立腺がんのメインの治療法には、手術、放射線治療があります。薬物治療(ホルモン療法)もありますが、根治のためには手術か放射線治療でしっかりと前立腺のがんを叩く必要があります。


 早期がんに対してわが国では手術が主に行われていましたが、最近では放射線治療も選択肢の一つと考えられています。手術と治療成績を比較したデータでは、両者にほとんど差がないことが示されています。


 放射線治療のメリットは手術と異なり前立腺を切り取らずに治療が可能であることです。そのため、手術で起こることがある尿漏れなどの後遺症が少ない利点があります。


 一方、放射線治療では前立腺の近くにある腸の被ばくによる腸炎や腸からの出血(下血)などの後遺症がみられることが、少なからずありました。


 しかし最近の高精度放射線治療では周囲の健康な臓器の被ばくを最小限に抑えることが可能になり、後遺症の発生率は非常に減っています。


 放射線治療のやり方は大きく2通りに分けられます。


 一つは体の外から皮膚を通して放射線を照射する「外部照射」、もう一つは前立腺に直接放射線の出る小さな金属のカプセルを埋め込む「密封小線源治療(組織内照射)」です。


 がんの進み具合やリスク分類により、どちらか一方あるいは両者が併用されます。外部照射では前立腺に対してより正確に放射線を集中する技術の強度変調放射線治療(IMRT)が広く行われ、少ない後遺症でがんを完治することが可能になりました。


 県内でも泌尿器科の医師と放射線治療医の緊密な連携で、IMRTや小線源治療を提供できる体制が整いつつあります。


 あなたやご家族、お知り合いで、もし前立腺がんの診断を受けた場合には、治療法の選択肢として「放射線治療」が適応にならないかどうか、医師に相談することをお勧めします。


 放射線治療に関する市民公開講座に足を運ぶのもよいでしょう。


 また、放射線治療の専門学会(日本放射線腫瘍学会)では、患者さん向けの動画をホームページ(www.jastro.or.jp/movie)で公開していますので、ぜひ参考にされてください。

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