座りっぱなしは万病の元

長田光司・ながた内科クリニック(2017年2月10日掲載)

体と脳、正常に機能せず ~沖縄県医師会編

 みなさんは1日に何時間座っていますか? アメリカの研究では1日に6時間以上座っている人は寿命が短くなるそうです。長時間座ることは喫煙以上に体に悪いんですよ。「座り病」とも言われています。座ったとたん下肢の筋肉の活動がストップし、カロリー消費は1分あたり1キロカロリーに低下します。2時間座ると善玉コレステロールが20%減少します。立ち仕事の人に比べて心血管疾患発症リスクが2倍になります。人間の体は動かないと正常を保てません。身体も脳もちゃんと機能できません。


 しかし、現代社会の私たちが1日に何時間も座り続けることは避けられません。立っている時間を1分でも増やすことが病気のリスクを減らします。立って考えると集中力が増し、よいアイデアがひらめきます。立って会議をすると会議時間が短くなって能率が上がります。歩くことや走ることも脳に刺激を与えます。学習能力に関わる脳の海馬の働きもよくなります。


 アメリカのある高校で、授業の前の0校時に生徒たちに運動場のトラックを走らせました。すると、国際的なテストで理科で世界1位、数学で世界6位になったそうです。さらに、生徒の肥満も減り健康にもなりました。運動が生理学的変化を引き起こし、脳のニューロン=神経細胞を結びつけることがわかってきました。


 運動が脳にもたらす効果は運動が身体にもたらす効果よりもはるかに重要であり、「運動の第一の目的は、脳を育ててよい状態に保つことにある」といわれています。座りっぱなしの生活こそ、脳にとっては大問題です。


 でも、安心してください。米航空宇宙局(NASA)の研究では30分に1回、立つようにすれば健康悪化を防げるとのことです。週2回の運動でアルツハイマー型認知症も防げます。運動でストレスホルモンを調整することもできます。2日に1回の運動がおすすめです。


 世界保健機関(WHO)によると、成人の4大疾患である心血管障害、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病を引きおこす要因としては喫煙、不健康な食事、運動しないこと、アルコールの飲みすぎを挙げています。アメリカの医学雑誌によると、がんの25%は座りっぱなしと肥満が原因であり、運動で25%のがんは予防できるそうです。1日15分の速歩きで寿命が3年延びるとも言われています。


 座って新聞を読んでいるみなさん、これからは立って新聞を読みませんか?

このページのトップへ