危険因子、時間重ね連鎖

平野亜紀・あき内科クリニック(2017年1月6日掲載)

メタボリックドミノ ~沖縄県医師会編

 健康診断は受けましたか? なかなか時間が合わずに、今年も見送ろうなんて考えてはいませんか? 沖縄県の健康長寿、働き盛り世代の健康に危険信号が出ています。


 そこで今回は「メタボリックドミノ」の説明をしたいと思います。メタボリック症候群(またはメタボリックシンドローム)とは、生活習慣病といわれる肥満、高血圧、耐糖能障害(高血糖)、脂質異常症(高コレステロール血症)などの危険因子が認められる状態のことをいいます。


 危険因子が集まると血管の壁が厚くなり血流障害を起こし、心臓の栄養血管が細くなる狭心症や心筋梗塞、脳を栄養する血管が破れたり詰まったりする脳出血・脳梗塞といった脳血管障害を発症します。


 メタボリック症候群では、肥満が病態の初めに起こり、遺伝的背景に、食生活や運動不足、喫煙といった環境因子が加わり、それぞれの危険因子が時間を重ねて連鎖することで動脈硬化性疾患を発症します。各危険因子の経時的な連鎖をドミノ倒しに見立てたものがメタボリックドミノの図として表されます。メタボリックドミノの図で上流から中流にかけての多くの場合ほとんど症状がありません。


 「飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足」などの生活習慣の乱れは肥満をきたします。問題となる肥満は小腸などの内臓の周囲に脂肪がたまりやすい内臓脂肪蓄積型肥満です。このタイプの肥満ではインスリンという血糖を下げるホルモンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」の状態になります。そのためホルモンのバランスや血管の状態を悪化させることがわかっています。


 メタボリック症候群と診断された時点で、「症状がないから」と生活習慣を見直さないと、メタボリックドミノがどんどん倒れ、さまざまな症状をおこしてしまいます。網膜症による失明、腎症による血液透析、神経障害による下肢切断は糖尿病の3大合併症です。動脈硬化をおこさないためには、ご自身の健康状態を知ることが大切です。そこで健康診断を活用し、もし危険因子が認められたら生活習慣の改善、「腹八分目」や「よくかむこと」「身体活動量を増やすこと」を始めてください。さらに規則的な生活、十分な睡眠に心がけ、喫煙者はぜひ禁煙しましょう。


 健康診断を受けたものの、医学用語や小さな文字が並んでいて読解不明でお困りの方、封書の内容が怖くて、または時間がなくて開封できない方はかかりつけ医へ持参し主治医に解読してもらうとよいですよ。ちゃーがんじゅうで長生きしましょう。

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