術後の小さな傷に満足感

新井弘一・やえせ整形外科(2016年12月16日掲載)

ばね指 ~沖縄県医師会編

 普段何げなく指を曲げるときにパキパキとひっかかるような違和感を覚えたことはないでしょうか? 指を曲げるとき屈筋腱(くっきんけん)は指の根本で腱鞘(けんしょう)というトンネルの中をスライドする構造になっています


 何かの原因で腱鞘炎になると腱が腫れてトンネルに引っ掛かるため違和感の原因となります。このような状態を狭窄性(きょうさくせい)腱鞘炎、いわゆるばね指と呼びます。軽症の場合には軽いストレッチや腱鞘内注射で症状は改善しますが、症状が進行すると指が曲がったまま伸びなくなる(ロッキング)、指の関節が硬くなり痛みで指をそらすことができない等の症状が生じます。


 治療を行っても症状が再発を繰り返す場合には手術(腱鞘を切開する)をお勧めするのですが「手術はちょっと…」とちゅうちょされる方がほとんどです。従来のばね指手術の場合、指の根本を1センチ程度切開するため、皮膚を縫合しないと傷が開いてしまいます。


 特に女性の場合、手術から抜糸までの期間(10~14日)水仕事ができないと家族が困る、というのが手術に踏み出せない大きな要因のようです。手袋をすれば大丈夫ですよ、と説明するのですが、忙しい主婦業をこなすためには手袋を付ける違和感は意外に大きな障害になるようです。


 これまで術後の回復を早めるためにできるだけ小さな傷で手術しようとさまざまな方法が考案されました。皮膚を切らない経皮的手術、特殊なナイフを用いる方法、内視鏡を用いる方法などがありますが、どれも一長一短であまり普及していないのが現状です。


 しかし最近超音波装置(エコー)の性能が格段に向上し、こうした小切開手術と組み合わせることにより安全・確実な治療が可能になりました。手術を受けた患者さんの満足度は非常に高い印象です。皮膚の切開はわずか2ミリなので縫合しなくても傷が開くことはありません。手術翌日からせっけんで手洗いができ、防水性の高いばんそうこうを使うことで、術後3日目から手袋なしで水仕事を行うことができます。皮膚を縫合しないため指を動かしても傷の違和感がなく術後のリハビリもスムーズに進みます。


 毎日痛みを我慢しながら家事をこなしている主婦の皆さん、思い切って痛みを取る治療を考えてみてはいかがでしょうか。まずはかかりつけの病院の先生にご相談されてください。

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