あがりすぎでお困りの方へ

中村明文・あかりクリニック(2016年12月16日掲載)

「社交不安障害」の治療法 ~沖縄県医師会編

 社交不安障害という病名をご存じでしょうか? 人前で緊張しやすく、あがってしまい、手が震えたり、ドキドキしたり、冷や汗をかいたり、その状況を避けようとして仕事や日常生活に影響が生じるメンタルの病気です。


 アメリカ合衆国での調査によると一生の中にかかる割合が13%と言われており、珍しい病気ではありませんが、日本での調査では1から2%程度と言われており、大きな開きがあります。専門の医師が注意深く診察しないとこの診断にならないと言われてもいますし、こうした困難を抱えている方の受診が日本ではあまり多くないためではないかともいわれています。


 私は開業医として仕事を最近から始めましたが、前職場の大学病院とは違って、社交不安障害の患者さんとお会いする機会が増えました。アメリカの疾患統計の方が実臨床ではしっくりくる印象です。


 社交不安障害に対する治療ですが、10年以上前と現在とは大きく違っていると思います。17年前に日本ではじめてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬が使用できるようになり、この薬が約10年前に社交不安障害に対しても使用可能になったからです。それ以前の治療薬はベンゾジアゼピン系抗不安薬くらいしかありませんでしたので、これを飲みながらなんとか、不安な状況をやり過ごすということを患者さんに指導していたと思います。


 最近、精神科医により行われている治療は、不安のメカニズムを患者さんにお伝えし、不安のピークは10分程度であること、不安な状況を回避せずにチャレンジする度に不安の強度が弱くなることなどをご説明しながら、不安に立ち向かいやすくなるSSRIの服用をお勧めしています。


 不安が高まった時の対処方法として呼吸法や筋弛緩(しかん)法などの対処スキルも練習していただき、自分の力で不安に挑める方法をお伝えしています。


 SSRIを服用しながら、こうしたスキルを身につけると、ベンゾジアゼピンに頼りすぎることなく、回避したくなる場面に立ち向かえるようになります。患者さんたちは不安な場面に立ち向かい、チャレンジし、克服しようとしてくださいます。診察医からみても本当に頭の下がる思いです。


 社交不安の症状が1年程度治まり、服薬の必要がなくなれば、SSRIはベンゾジアゼピンとは異なり、やめやすい薬です。主治医の先生と相談しながらゴールの見える治療が可能になっていると思います。

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