災害救護、全国に医療チーム

沖縄赤十字病院・佐々木 秀章(2016年11月4日掲載)

~沖縄県医師会編

 沖縄には東日本大震災や熊本地震のような大災害は来ないと信じている方々はまだ多いのでしょうか。それとも来るかもしれないが自分は大丈夫と考えている? 自然の脅威は長い歴史でみれば必然ですから、人間の想像力と知恵を生かした備えは常に必要でしょう。


 さて災害時に最も優先されるべきことは人命です。そして被災者の命やケガ、病気に関わることすべてが災害医療になります。避難所の中で向き合って診察しているイメージを持つかもしれませんが、最近の災害で経験したのは被災者を守るためにはそういった救護活動と並行し、いかに迅速に医療と公衆衛生のシステムを維持、復旧するかでした。


 被災地では命を預かる最後のとりでである病院も地震で壊れたり津波に襲われたりします。病院の水や電気が底をつき、入院患者さんの避難が必要になる可能性もあります。熊本地震では全入院患者避難が10病院ありました。当然受け入れ先の病院や搬送の方法も考えなければなりませんが、必要な治療を行いながらの搬送ですので簡単ではありません。また東日本大震災では透析患者さんの他府県への避難も行われました。


 医療救護活動は避難所で持病の治療の継続や普段と違う環境で体調を崩した方の診療を行いながら、環境のチェックやインフルエンザ、下痢などの感染症が集団発生しないよう監視、衛生指導を行います。こころのケアやエコノミー症候群等の災害関連死の予防にも努めます。


 国は従来の赤十字等に加え、この迅速性を求めるためDMAT(災害派遣医療チーム)、DPAT(災害派遣精神医療チーム)を全国に組織し、日本医師会はJMAT(日本医師会災害医療チーム)を創設しました。また各都道府県にはさまざまな調整を図り医療システムを守り、効率よく医療チームを運用するために災害医療コーディネート制度設置を促しています。


 人口密度の極端に高い島嶼(とうしょ)県で交通手段の限られる沖縄は、大災害時には水、電気、食料、トイレ等すべての面で物資が不足し、また支援のアクセスも容易ではなく、さらに亜熱帯気候も相まってこれまで日本で経験したことのない状況になることが予想されています。まずは生き延びるために、大災害に備えてご家族、地域でも話し合ってみてはいかがでしょうか。


 なお災害に限らず突然の緊急事態に備えて、お薬手帳や保険証、普段飲んでいるお薬、可能であれば病名やアレルギーの記録等をすぐに持ち出せるよう心掛けていただければと思います。

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