ピル

古堅善亮・古堅ウィメンズクリニック(2016年10月21日掲載)

~望まない妊娠避けよう 沖縄県医師会編

 ピルとは女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンを合わせた薬で主に避妊薬として使用され、コンドームや子宮内避妊器具(リング)より避妊効果が高いと言われています。ちゃんと服用すれば99・8%の避妊効果がありますが、飲み忘れによりまれに妊娠することがあります。


 長期間服用しても中止後妊娠しづらくなるということはありません。ピルを飲んでいると月経痛が減り、量も少なくなるため生活の質が上がることが多いのです。若い女性で月経痛がひどく、普段の生活に支障を来すほどの人はピル使用をためらうことはありません。後から述べるピルの副作用は若い人ほど、頻度は低いのです。


 また月経前症候群(月経前に精神的、身体的に調子が悪くなること)にも有効であり、ピルの種類によっては、にきびを改善させることがあります。その他、長期に飲んだ人では卵巣がん、子宮体がん、大腸がんになる率が下がると報告されています。


 このようにピルには副作用の反対の副効用が多いことが知られ、欧米の使用率は高いのですが日本ではまだあまり普及していません。しかし薬には必ずある一定の確率で副作用があります。


 まず一番多いのが不正性器出血と吐き気ですが、飲み続けていくとなくなることが多いのです。体重増加について調査した報告では体重の変化に差がないとされていますが、少数例で体重が増えることがあるようです。乳がんと子宮頸(けい)がんの発生率に関してまだ結論はでていませんのでがん検診は受けるべきだとされています。


 頻度は少ないのですが最も重症な副作用は静脈・動脈血栓症です。静脈血栓症はエコノミー症候群といわれ、足の静脈に血の塊ができて詰まり、片足の浮腫みや痛みなどの症状がでます。その血の塊が肺の血管まで流され、詰まってしまうと肺塞栓(そくせん)という状態で急激に呼吸や循環の状態が変化し、まれに死に至ることもあります。静脈血栓症の発生は肥満や喫煙、40歳以上の者に多く、飲み始めの3カ月に多いので最初のうちは特に注意が必要です。その他動脈血栓症(心筋梗塞、脳卒中)も増えるのですが高血圧、喫煙女性、前兆のある片頭痛の女性は特にリスクが増えます。


 ピルの重篤な副作用の頻度は1万人に数人程度と非常に低く、交通事故に遭うより低いのです。望まない妊娠をすると、本人や周囲の人間が苦しむことになります。


 確実な避妊をして自分の生活プランを自分で管理していただきたいと思います。

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