東京五輪・パラリンピックと風しん

石川隆夫・石川医院(2016年10月14日掲載)

~予防へワクチン接種を 沖縄県医師会編

 1964年7月、米国統治下の沖縄に聖火が到着し那覇空港や各地で大歓迎されました。しかし、同年末から65年にかけて風しんが大流行し408人ものCRS(先天性風疹症候群)が報告されました。米国では63年に風しんが大流行し約2万人ものCRSが報告されていますが、ベトナム戦争の前線基地であった沖縄でも流行したのです。


 風しんの免疫を持たない女性が妊娠初期(20週まで)に感染すると風しんウイルスが胎児に感染し、出生児にCRSと総称される障がいを引き起こすことがあります。3大症状は先天性心疾患、難聴、白内障です。その他に、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発達遅滞、小眼球などがあります。沖縄県では特に難聴児の多発は北城ろう学校を開校するに至り社会問題となりました。


 風しんワクチンはCRSの発生減少を目的に77年、学校での集団接種が開始されました。さらに風しんの流行を抑えることを目的に95年、12カ月~90カ月未満の男女小児と男女中学生は1回の個別接種が始まりました。集団接種は同年に廃止されました。


 そして、接種率が低下したため、期間を限定し1回定期接種の機会を設けましたが、PR不足もあり接種率はさらに減りました。2006年からは麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)となり1歳児と小学校就学前の1年間に定期接種が開始されています。


 しかし、わが国では風しんの流行は繰り返されており、CRSの報告も続いています。


 沖縄県では12年~14年に104人の風しんが報告(CRSの報告なし)されました。そのうち性別では男性が69%、年齢別では男性は20歳代~40歳代が83%、女性は20歳代が72%を占めています。全国でも風しんの流行があり、CRSは45例も報告されています。性別、年齢別は沖縄とほぼ同様です。現在では風しんワクチン接種の経緯から風しん患者は成人男性が中心となっていて、職場など周囲に感染させることが多いのです。


 厚生労働省は東京五輪・パラが開催される20年までに風しんの排除達成と早期にCRSの発生をなくすことを目標に掲げていますが、国の助成などは今のところありません。定期接種の子供のほか、接種歴が1回か不明の20代~40代の大人も風しんまたはMRワクチンを接種し生まれてくる子供たち、妊婦さんを守りましょう。


 しかし、今年の8月から関東、関西で麻しんの報告が増え、ワクチンが不足しているとの報告もあるため、MRワクチンは医療機関で相談し接種しましょう。

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