健康寿命で長生き
運天啓一・運天産婦人科医院(2016年8月19日掲載)
~食生活と運動心掛けて 沖縄県医師会編
未曽有の高齢化社会となった今、健康長寿について注目されるようになりました。認知症、寝たきりにならず不自由なく生活できて初めて長生きできたかいがあります。しかし現実には女性の健康寿命は78歳、男性では72歳と言われています。今回は健康寿命に寄与する食生活、運動についてのトリビアをお話します。
【食生活】メタボは糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病、がんの原因になり健康寿命を縮めます。メタボを予防するには食物繊維を野菜、キノコ等から摂取する必要があります。消化管内では未消化の食物繊維は善玉の腸内細菌達のえさになり、その代謝産物が肥満予防に働いています。
一方、甘いもの(人工甘味料も)を多く摂取すると肥満を助長する悪玉の菌が多数繁殖します。結果として同じカロリー量を摂取しても消化管からの消化吸収を増加させて肥満になります。
ですから従来のカロリー計算だけによるダイエットは成功しにくく、新たな栄養学的な指針が必要になるでしょう。近年消化管は血糖値を下げるホルモンを分泌し糖尿病を予防し、善玉の腸内細菌の力を借りて免疫力を高め、がん、感染症の予防にも役立つことがわかりました。消化管、腸内細菌達はよく頑張っているのですね。メタボ予防のために日頃の食事内容がいかに大切かがご理解頂けたと思います。
【運動】運動のメリットは単に心肺能力を高めるだけではありません。運動習慣は単に筋肉量が増加するだけでなく筋肉が質的に変化します。すなわち筋肉内の血管の数が増えバイパスを増加させます。筋肉は肝臓と並び血糖を消費する最大の臓器です。
ですから運動することでより血糖値が下がり糖尿病を予防します。また血管の絶対数が増加しますので、液体である血液は細い血管内を通過する際に抵抗が減少し、スムーズに流れやすくなり自然に血圧が下がってきます。それが高血圧の予防につながります。心臓の筋肉の血管のバイパスが増えて心筋梗塞にもなりにくいでしょう。また交感神経が活性化され、筋力が増強し転倒防止、認知症の予防になります。おまけに大腸がんの予防、乳がんの再発予防にもなると言われていますので運動習慣はよいことずくめですね。
日本の国民医療費は40兆円、喫煙関連疾患が6兆円になり今後増加の一途をたどると予想されます。日頃の皆さんの努力が医療費の抑制にもつながります。ほんとうに困ったときのためのお金ですから有効に使いたいものです。健康寿命で長生きしたい皆さん、モチベーションは上がったでしょうか。