体の衰え(フレイル)を防ごう

伊佐眞・医療法人真愛会伊佐整形外科(2016年4月29日掲載)

 超高齢社会に突入した日本では、自活できる健康寿命を延ばすことが大変重要になってきました。年をとると老衰状態に陥り、何らかの介護を受けるようになります。フレイルとは虚弱を意味する英語Frailtyから出た言葉で、介護の必要はないが筋力や心身の活力が低下した状態のことです。高齢者のフレイルを早期発見して要介護状態にならないよう対処しなければなりません。


 (1)重病でもないのに1年間で2~3キロ体重が減った(2)青信号の間で横断歩道を渡れない程歩くのが遅くなった(3)以前よりだるくて疲れやすくなった(4)ペットボトル2リットルが持てなくなるほど筋力が落ちた(5)身体活動性が低下して踊りやゲートボール等に参加しなくなった。この中で三つあてはまったらフレイルです。何の対策もとらずにいると、75歳以上の後期高齢者の多くがこの段階を経て、要介護状態に徐々に近づいていきます。


 フレイルへの対応は筋肉・栄養の低下を防いで、持病をコントロールし、疾病を予防することです。


 筋肉を鍛えるために、毎日5千歩のウオーキングと週3回は壁を使っての腕立て伏せや、いすから立ち座りするスクワットなどの筋トレをしましょう。できればジムで指導を受けてください。


 栄養面では、筋肉の元である良質なタンパク質とビタミンを適切な量を摂ることです。腎臓病などで食事制限がある場合は医師の指導の下、栄養不足にならないよう気をつけてください。


 運動後1時間以内の栄養摂取が筋タンパク合成に最も有効です。感染症を避けるため予防接種は必ず受けてください。糖尿病などの持病は悪化しないよう治療を継続しましょう。


 自立して良好な生活を送っている100歳長寿者研究で分かった重要事項は、視力が良好、定期的な運動、朝の自発的覚醒、かんで食事ができる、酒を飲まない、95歳以上で深刻な転倒をしない、タンパク質をしっかり摂る、自宅で生活することだそうです。逆に虚弱高齢者で多いのは、運動習慣がない、あまりタンパク質を摂らない、そして転倒しやすいことでした。


 高齢になってもフレイルにならず自立した生活が送れるようにするには、中年期からの運動習慣、メタボにならないバランスが取れた食事、禁煙、アルコール摂取抑制、転倒せず、頭部外傷を負わないようにするなど日頃の地道な努力が大切です。動いて、食って、転ばず元気で、ニコニコ長生きを目指しましょう。

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