白内障の手術
松永次郎・松永眼科医院(2016年4月8日掲載)
近視改善などメリット
高齢者の視力低下を来す代表的な病気として白内障があります。白内障とは目の中の水晶体(レンズ)が濁った状態です。白内障は加齢とともに発症、進行しますので、少なくても60歳を超えればすべての人にみられます。
白内障の進行は個人差が大きいため、必ずしも手術が必要になるわけではありませんが、進行した例では手術が必要です。手術方法としては超音波による手術が代表的です。
超音波手術は、超音波で白内障を砕いて吸引し、除去した白内障(水晶体)の代わりになる眼内レンズを目の中に挿入する手術です。眼内レンズは一生、目の中に入れておいて問題ありません。超音波手術は局所麻酔で行うことができ、術後の回復が比較的早いため最も多く行われている術式です。
白内障手術は視力の回復以外にも、以下の3点の状態の患者さんにメリットがあります。
第一に、強い近視や遠視がある状態です。手術時に挿入する眼内レンズの度数は自由に選ぶことができ、眼内レンズにより近視や遠視を改善することができます。第二に、強い乱視がある状態です。強い乱視眼では見え方のひずみが強く、眼鏡での矯正が難しくなります。そういった例では、乱視矯正用の眼内レンズを使用すると、乱視を軽減することができます。
第三に、閉塞(へいそく)隅角(ぐうかく)緑内障を合併している例です。閉塞隅角緑内障は目の中の水の通り道が狭く、水の循環が悪くなることで眼圧(目の圧)が高くなってしまう病気です。手術で白内障を除去することによって前述の水の通り道を広げる効果があり、緑内障の予防、眼圧の下降に有効です。
手術を行う時期としては、年齢が高くなりすぎず白内障が重症化していない時期までに行うことが望ましいです。
白内障が重症化した例では手術時間が長くなり、合併症も発症しやすくなってしまいます。また認知症があるケースでは全身麻酔が必要になりますが、高齢者に対する全身麻酔は体に対する負担が大きく、一部のケースでは手術を行うことができないことがあります。
視力は低下すれば、生活の質が大きく損なわれ、日常生活の自立が困難になりますし、認知症の進行にも関与します。そのため進行した白内障は放置すると必ず、ご本人や周囲のご家族にとって避けることができない大きな問題につながります。
白内障は適切な時期に手術を行うことが重要です。白内障の心配がある方は、1度お近くの眼科クリニックでご相談されることをお勧めします。