発音が気になる子
大城聡・おおキッズクリニック(2016年3月25日掲載)
4~5歳まで様子見て
幼稚園の先生から「○○ちゃんは、以前から『サ』を『タ』って言っていて気になっていたけど、なかなか良くならないから小学校入学前に一度専門家に相談しては」と助言をうけて外来を受診するお子さんが時々います。
診察室では、これまでの発達の様子、ことばの増え方、家族内での会話の様子を確認、ついで構音器官(口唇、舌、口蓋(こうがい)、咽頭など)の形や動きの異常の有無、難聴の有無を含めて全身を診ていきます。その結果、異常を認めなければ、機能性構音障害と診断して構音訓練を行うことになります。
機能性構音障害というと、聞き慣れない方もいるかと思いますが、「ことばを理解し、伝えたいことばもはっきりしているのに、構音器官(口唇、舌、口蓋、咽頭など)を使って正しく構音(発音)できず、会話をする相手に不自然な印象を与えてしまう状態」をさしています。俗に沖縄方言で「テーテームニー(赤ちゃんことば)」というように、「おかあさん」と呼ぶ際に「オカアタン」といつも置き換えて話すことをイメージしていただければよいでしょう。
一方、この構音訓練を必要とする機能性構音障害とよく間違われるものに、未熟構音というものがあります。これは、子どもたちが、日本語の全ての発音を、あるとき一度に、正しく発音できるようになるわけではないために起こる、発音の完成途上で見られる誤った発音です。この未熟構音のほとんどが、発音の発達が完成する4~5歳ぐらいまでには自然に良くなっていきます。
したがって、発音に誤りがあるからといって、ただちに構音訓練をするわけではなく、その子の年齢あるいは発達の様子やその特性などをみてから、治療する時期を決めていく必要があります。例えば、4歳のお子さんが「オカアタン」と発音していても経過をみていくだけで自然に良くなることもあります。しかし6歳のお子さんが同じような発音をしている場合は、周囲がかなり違和感を持ちますので、構音訓練が必要となります。
このように自然に良くなることも多い子どもの発音の誤りですが、小学校入学後にもこの誤りが残ってしまうと、友人にからかわれて自信を失うなど、学校生活のスタートでつまずいてしまうことがあります。
ですので、お子さんの発音が気になるような場合には、小学校入学1、2年前には専門家に相談し、家庭内での対応の仕方、訓練の必要性の有無を相談されることが望ましいかとおもわれます。