万全ではない健康診断

砂川 亨・沖縄県健康づくり財団附属診療所(2016年1月15日掲載)

 皆さん定期健康診断を受けていますか。定期健康診断にもいろいろありまして法律で実施が義務付けられているものと、任意で行うものがあります。前者の代表的なものは40~74歳の公的保険加入者を対象とする特定健診(特定健康診査)や、学校検診、職場検診などがあります。一方、任意で行う健康診断としては人間ドック等が挙げられます。


 特定健診は生活習慣病の対策として発症リスクの高い人を健診で早めに発見し、生活習慣の改善を早い段階で行うことによって生活習慣病を予防するため2009年に導入されました。その内容は腹囲、中性脂肪、コレステロール、空腹時血糖、血圧測定などメタボリック症候群とその予備軍の早期発見を重視した検査項目となっています。


 検査の結果、内臓脂肪型肥満、高血糖、脂質異常、高血圧など生活習慣病やその予備軍と判定された場合、そのリスクに合わせて医師や保健師、栄養士などが食生活や運動習慣についてのアドバイスを行う特定保健指導が実施されます。さらに加えて各種がん検診等が同時に行われます。職場健診では15年12月よりこれまでの健診に加え労働者数が50人以上の企業においては医師等による心理的な負担の程度を把握するストレスチェックの実施が義務付けられています。


 一方、任意で行う健康診断の代表的なものが人間ドックです。法律に定められた健診とは異なり、人間ドックはあくまでも任意であり個人の健康状態のチェックや各種がんをはじめとした生活習慣病の早期発見のために受診します。その内容はより精密で幅広い検査が行われるようになって来ており、施設によっていろいろなオプション検査も多く、がん検診をより精密に行ったり、脳ドックやさらに最近は遺伝子ドックなどの遺伝子検査も提供されるようになって来ています。


 遺伝子検査については、受診に際しその検査やカウンセリングを含めた結果説明の体制が十分提供されているかどうかをしっかり見極めたうえで受診しなければいたずらに不安を抱える結果になりかねないと思います。


 健康診断を受ける際、特に最近の人間ドックでは何でもわかるだろうと思っている受診者がいます。症状が出ていても人間ドックで異常なしといわれたから、あるいはもうすぐ人間ドック受診だからと放置することがあります。


 人間ドックを含めた健康診断は万能ではありません。少しでも気になる兆候、症状があるときは迷わず専門医を受診することが大事になります。

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