下肢静脈瘤とはどんな病気?

春藤啓介・北部地区医師会附属病院(2016年1月8日掲載)

 ふくらはぎに血管が青く浮き出て、こぶ(瘤)のようにモコモコふくれて見えるようなことはありませんか? これが下肢静脈瘤(りゅう)です。


 足の静脈は皮下を走る表在静脈と筋肉の中を走る深部静脈があり、これらお互いをつなぐ穿通枝(せんつうし)があります。また表在静脈には、ふくらはぎの内側から太ももの内側を通って足の付け根まで続いている大伏在静脈と、かかとからふくらはぎの裏側を通って膝まで続いている小伏在静脈があります。


 静脈は血液が手足の先から心臓に向かって帰る向きに流れるようになっており、足の静脈は重力に逆らって足先から付け根(下から上)に向かって血液が流れるため、逆流を防ぐための弁がついているのですが、この弁がいたんでしまうと血液が逆流して足の下の方に滞ってしまい、血管がこぶのようにふくれてしまいます。静脈瘤は表在静脈にできるので、ふくらはぎの内側や裏側の血管がふくれてきます。


 男性より女性に多く、立ち仕事をされてる方に起こりやすく、また妊娠、出産をきっかけにできることもあります。


 血管がふくれているだけで無症状の方も多いのですが、足の疲労感、こむらかえりや、足の腫れ、痛み、かゆみ、熱感などの症状が出る方もおり、重症化すると静脈瘤のまわりに炎症をおこして皮膚の色素沈着や硬化、さらには潰瘍形成を起こすことがあるため症状のある方で放っておくのは禁物です。


 治療には圧迫療法(弾性ストッキング装用)のほか硬化療法、手術療法などがあります。弾性ストッキングは、足を圧迫することで静脈瘤内の血液が減り、症状は緩和されます。硬化療法は静脈瘤内に硬化剤を注射して固めてしまう方法で、手術はストリッピング手術(静脈抜去術)と瘤切除の組み合わせが基本ですが、最近はレーザーやラジオ波による血管内焼灼(しょうしゃく)術も行えるようになっています。


 弾性ストッキングは手軽ですが、効果は装用中だけで、静脈瘤そのものが治るわけではないので、症状のある方は硬化療法や手術を選ばれることをお勧めします。


 治療方法については、ふくれている血管の太さ、場所、患者さんの体形(太っているか、やせているか)などによって決めることとなりますので、ふくらはぎの血管がふくれて気になる方はお近くの医療機関(血管外科や外科だけでなく最近は皮膚科や形成外科などでも診療されているところがあります)で相談されるのがよいと思います。

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