便の検査
打出啓二・下地診療所(2015年11月20日掲載)
食中毒など 防ぐため
みなさんは、健診で便を提出した事が1度くらいはあると思いますが、何の検査をされたかご存じでしたでしょうか?
便の検査には、主に、便の感染症(食中毒の原因菌やウイルス、寄生虫)を調べる検査と、便潜血の検査の2種類あります。本日は前者についてのお話をしましょう。
便の中には、いろいろな物が含まれています。食べ物が胃や腸を通過しながら水分や栄養分が吸収された残りかす(残渣)、肝臓でつくられる消化液(胆汁)、腸内細菌などです。
腸内細菌として有名なのがビフィズス菌、乳酸菌、大腸菌などです。みなさんの腸の中には必ず大腸菌はいると思われます。普通の大腸菌(無毒株)は、健康な人に対して悪さをする事はありませんが、時々ニュースなどで話題になる病原性大腸菌は、下痢や腸管の出血を起こしたりすることがあるので、注意が必要です。
給食センターや飲食店の厨房(ちゅうぼう)など、食品を取り扱う仕事をされている方は、定期的な検便で、赤痢菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌血清型O157等が便中に含まれていないかどうかを調べられていると思います。それらの菌が食品の中に混入すると食中毒をおこし、深刻な事態になりかねないからです。
前記の菌が体内に入ると、ひどい下痢をおこす事が多いですが、中には無症状で経過する方もいらっしゃいます。「無症状病原体保有者」と言われますが、基本的には、検便を繰り返し行い、保菌していない事が判明するまで、食品に直接接触する作業はできないことになっています。
便の検査で、寄生虫を調べることもあります。便の中に寄生虫の卵や成虫が混じっていないかを調べます。昔と比べて衛生状態が良くなったので、寄生虫の感染はそれほど多くはありませんが、決して過去の病気ではありませんので、十分に注意してください。
みなさんの中で、検便で便を提出しなければならない日に、便が出なくて困った事はありませんか?
便秘症で便がなかなか出ないからといって、他人の便や、ペットの便などを提出しないでください。飼い犬の便を提出し、たくさんの寄生虫が見つかり大騒ぎになった話を聞いた事があります。便の検査で大切な事は、必ずご自分の便を提出するということです。
そのためにも、便秘にならないように、食物繊維を多く含む食べ物を摂取し、適度な運動をし、水分をしっかりとるなど、普段からの生活習慣に気をつけましょう。