脊髄損傷

原国毅・浦添総合病院(2015年11月6日掲載)

破壊されたら再生せず

 脊髄損傷について、お話したいと思います。脊髄は、1~1・4センチの太さの神経で、頭蓋骨からでて、背骨の中央の管になっている部分を通っていきます。1本の棒のような神経で、背骨と腰の境目で終わります。その後、多数の細いひも状の神経に分かれていきます。


 脊髄は、大脳と異なり、細い脊髄の中にいろいろな神経が通っています。脳の中で考えられた命令は、この脊髄を通って、命令を受ける体の各部分へと伝わります。また、手足で感じた感覚(痛みや熱い冷たいなど)は、逆の方向を走行して、脳の中のそれらを認識する部分へ行きます。脳や脊髄は、頭蓋骨や脊椎といった硬い骨の中にあり、守られています。


 何らかの原因で、神経の細胞が障害を受けた場合に、脳や脊髄では、いったん破壊された神経細胞は再生しません。損傷を受けた神経そのものを直すことは、まだ実際の治療の現場では行われていません。手術では、神経を圧迫しているものがあれば、これを除きます。神経の周囲にある骨が変形している場合は、この変形を直すことになります。神経への圧迫をとることで、さらに悪化することを防いで、早く体を動かせる状態に持っていくことを目的としています。


 リハビリテーションは非常に重要で、神経損傷で失った能力を残された能力を用いて、生活の自立度をあげていきます。最近では、SF映画に出てくるような、ロボットスーツを使用して、リハビリが行われています。このスーツは、沖縄県内のいくつかの病院でもすでに使用されています。


 脊髄が損傷されると、筋力低下以外に、四肢の痛みやしびれ、上肢・下肢がつっぱる等の症状がでてきたりします。痛みやしびれは、最近では新しい内服薬や貼り薬、ブロック注射、神経刺激装置の体内への埋め込みにより、軽減することは可能となっていますが、まだ完全に症状をなくすことは難しいです。上肢や下肢のつっぱりに対しては、筋肉へつっぱりを和らげる薬を直接投与する方法や、体内へポンプを埋め込んで脊髄へ薬を直接投与することで、つっぱりを和らげる治療もあります。


 脊髄損傷は、起こさないように予防することが重要です。運動や仕事においては、脊髄損傷が起こらないように環境の整備や安全面の検討が重要です。脊髄損傷は、その神経の損傷にあわせて、筋力低下、感覚低下、排尿・排便の問題、痛み等、多彩な症状を呈します。このため、それぞれの専門の先生と相談しながら、治療を行っていくことになります。

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