前立腺がん
翁長朝浩・中部徳洲会病院(2015年10月16日掲載)
ロボット手術に保険適用
前立腺という臓器は男性だけにしかなく、尿道(尿の通り道)にあって、精液を作り、精子を助けて子孫を残すという重要な仕事をしている場所です。また、加齢による変化で、前立腺が大きくなる(前立腺肥大症)になると、夜間頻尿など排尿障害の原因になることもあります。
この臓器にもがんができることがあり、日本でも年々増加する傾向にあります。
その罹患(りかん)率(がんになる頻度)が、2013年には肺がん、大腸がんを抜いて、男性のがんの第2位(第1位は胃がん)になりました。前立腺がんの場合は、早期発見して、適切な治療さえ行えば、がんを克服することも可能です。ただし、放置すると、他臓器に転移して命に関わる重篤な疾患です。そのため、早期に発見し早期に治療するのが一番となります。
早期の前立腺がん(前立腺に限局していて、転移のないがん)の場合、治療法として(1)手術療法(2)放射線療法が一般的です。健診や人間ドックでPSA(血液の検査)を測定すると、前立腺がんの疑いがあるかどうか判断できます。
かつて、米国では男性のがんの死亡原因の第2位でしたが、早期に発見し、適切な治療を行うことで、死亡率は年々低下してきています。日本でも12年4月から、この前立腺がんに対する治療としてロボット手術が保険適用になりました(米国では、前立腺がんの手術の90%がロボット手術で行われます)。今ではダビンチ・サージカルシステムというロボット手術の器械が日本で179台(14年末現在)稼働しており、前立腺を摘出する手術が広く行われています。
ロボット手術は、高度なコンピューター制御のもと、安全かつ精密な手術が可能で、合併症の頻度も抑えることができます。また、従来の開腹手術や腹腔(ふくくう)鏡手術と比べて(1)出血が少ない(2)傷が小さい(3)痛みが少ない(4)回復が早い(5)機能温存が容易等の利点があります。それだけではなく、ロボット手術が普及するにつれて、術後尿失禁がおこる頻度、回復までの期間、男性機能の回復等で、他の治療法よりも良い成績をあげるようになりました。
一方、費用が高価(保険適用あり、高額医療の申請が必要)で、手術時間がやや長いといった欠点もあります。2人に1人はがんになって、3人に1人はがんで亡くなる時代です。50歳を過ぎたら、ぜひ健康診断や人間ドックでPSAをチェックしてください。前立腺がんだけでなく、定期的な健診で早期に病気を発見して、早めに治療することで、健康長寿をめざしましょう。