電子タバコの安全性

譜久原弘・南山病院(2015年8月21日掲載)

 健康への害が広く知られてきた紙巻きたばこに代わり、たばこ会社は電子たばこを売り出そうとしています。たばこ会社は電子たばこについて、ニコチンを含まないので害が少なく、副流煙がなく煙をまき散らす心配がないため周りの人にも害がないと宣伝しています。


 果たして本当にそうなのでしょうか?


 たばこ会社の経営戦略はかなり進んでいます。世界保健機関(WHO)は、2013年の電子たばこの売り上げが30億ドル(全世界)で、2030年までに17倍増えると予想しています。世界の大手たばこ会社は電子たばこ会社の買収を進めています。


 日本では、日本たばこ産業株式会社(JT)が2013年から電子たばこの販売を開始、2014年には英国の電子たばこ会社を、2015年には米国の電子たばこ会社を買収しました。このように、日本を含む世界のたばこ会社は紙巻きたばこから電子たばこへの移行を着々と進めているのです。


 WHOは、電子たばこの害に気がついています。2014年に「青少年や胎児に健康上の深刻な脅威をもたらす」との見解を示し、未成年者への販売禁止を勧告しました。米国や欧州連合(EU)は未成年者への販売や公共施設での使用を禁止するなど、規制を始めています。


 厚生労働省の研究班は、国内で販売されている電子たばこについて9種類の吸入器具と103種類の液体を調査しました(平成27年5月発表)。


 その結果、依存物質の「ニコチン」や発がん性物質の「ホルムアルデヒド」が検出され、中には紙巻きたばこを上回る発がん性物質が検出されたものもあったと報告しています。


 たばこ会社は禁煙対策として電子たばこを宣伝しています。今後、日本でも電子たばこの急増が予想されますが、その前に正しい知識を広める必要があります。(1)若年時からの教育と、(2)未成年への販売禁止などの法整備を一刻も早く進めるべきであると考えます。


 喫煙することでニコチン依存症となります。ニコチン依存症は、脳の病気ということが分かってきました。禁断症状に対する薬も開発され、以前と比べると、かなりやめやすくなっています。


 禁煙治療は一定の条件を満たせば健康保険が使えます。ご興味のある方は、ぜひ禁煙外来のある医療機関へご相談されてみてはいかがでしょうか。

このページのトップへ