体内時計の乱れ
長岡 研太朗・みなみそら医院(2015年7月17日掲載)
人間には生まれつき体内時計が備わっており、特に意識しなくても昼間は起きて活動し、夜は眠くなって休息を取るようにできています。だいたい同じ時間帯に目が覚めたり、お腹がすいたりというのは体内時計の働きです。
このリズムを作っているのが脳の中の松果体(しょうかたい)という部分から分泌されるメラトニンというホルモンです。夜になって暗くなるとメラトニンが大量に分泌され、自然に眠くなります。逆に朝になって明るくなるとメラトニンの分泌は抑制され、身体が活動しだします。
このように人間は昼の明るさと夜の暗さを認識し、メラトニンというホルモンを介して体内時計を刻んでいるのです。ところがメラトニンは幼少の時にもっとも分泌が多く、その後は徐々に分泌能力が低下していき、70歳位になると昼と夜の分泌量の差が極めて小さくなります。子どもの頃は夜になると自然に眠くなり、ぐっすりと眠れていたのに、年齢とともに「熟睡できない」「朝早く目が覚めてしまう」など睡眠に関する悩みを感じていませんか? これは年齢とともにメラトニンの分泌が減少し、体内時計の働きが弱くなってしまうことも関連しているのですが、次のような心掛けで体内時計を鍛えておきましょう。
まず一つ目は毎朝決まった時間に起きること。朝起きて明るい光を浴びることにより、メラトニンの分泌が減少し、体内時計がリセットされます。日によって起きる時間がバラバラだったり、休日に昼まで寝ていたりすると、体内時計のリズムが乱れてしまい、眠りにくくなります。多少夜更かしした翌朝でもとりあえずはいつも通りの時間に起きて、カーテンを開けて明るい光をしっかり浴びて体内時計をリセットしましょう。毎日決まった時間に寝ることではなく、「毎日決まった時間に起きる」ことが大切です。
二つ目は夜きちんと暗くすること。夜遅くまで明るい照明を浴びていたり、スマートフォンやパソコン、テレビなどを見ていたりすると、夜になってもメラトニンの分泌が増えず、体内時計が乱れる原因となる場合があります。夜は明るい場所を出歩いたり、明るい画面を見たりせず、家で照明を少し暗くしてリラックスするのが理想的です。
体内時計の乱れによる不眠が続くと、精神的・身体的に悪影響が出てきます。人間は本来、昼は明るく夜は暗い世界に生きるものであるということを再認識して、体内時計を大切にしましょう。