虫さされの症状

神山琢郎・みやま皮フ科(2015年7月10日掲載)

 暑くなるとたくさんの患者さんが虫さされで皮膚科を受診します。ここでいう虫とは昆虫(蚊、ノミなど)、クモ、ムカデなどの有害節足動物のことを指します。


 虫さされは大きく三つに分類できます。(1)蚊、ブヨなどは栄養を摂取するために皮膚から吸血します(吸虫性動物)(2)ハチ、ムカデなどは攻撃のため皮膚を刺します(刺咬性動物)(3)ケムシは保身のため有毒毛を持っており、これにより皮膚にかぶれが生じます。


 虫さされで生じる皮膚の障害は刺激とアレルギーで説明できます。アレルギーは即時型の反応と遅延型の反応に分類されます。


 即時型反応とは、さされた直後~15分程度で発症し、1~2時間で消失します。特にハチの場合 アナフィラキシーといって、じんましんや呼吸困難などが出現し、血圧が低下し死に至る場合もあります。


 遅延型反応とは、さされた1~2日後に生じる反応でかゆみを伴う発疹が生じます。一般的な虫さされとはこれを指します。


 虫さされの起こり方を具体的に説明します。吸虫性動物は血を吸う前に唾液を皮膚に注入して血液が固まるのを抑えます。その物質は皮膚への直接の刺激作用はありませんが、何度か繰り返すうちにアレルギーを獲得します。刺咬性動物の場合、刺咬の際に有毒成分が皮膚に注入されます。その成分が皮膚を刺激することで発赤や痛みを生じます。


 この有毒成分の中にはアレルギーを起こす物質が大量に含まれるため、アレルギー反応も生じてきます。スズメバチの場合、毒液は多量となるため、強いアレルギーが生じやすくなります。ケムシの場合、吸虫性動物と同様にアレルギー反応のみが生じます。


 蚊に刺された場合の経時的なアレルギー反応の出方を説明します。(1)初めて刺されたときは、唾液に対するアレルギー反応を生じないため無反応ですが(乳児期)(2)その後、まず遅延性反応が出現し(幼児期)(3)ついで即時型反応が出現するようになります(~成人)(4)さらに刺され続けると遅延型反応は減弱し(~中高年)(5)さらには即時型反応までもが減弱して、最終的には蚊に刺されても無反応になります(~更年期)


 他の吸血性動物による皮膚反応も同様の経過をとります。このように虫さされと言っても、虫の種類、個人の反応によってさまざまな症状をとっていきます。

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