りんご病の母子感染

大橋容子・南部医療センター・こども医療センター(2015年6月5日掲載)

 妊娠中に感染すると胎児に影響が出るかもしれない母子感染症として、風疹やトキソプラズマを知っている人はいるかもしれません。しかし、りんご病を知っている人は少ないのではないでしょうか。


 中には人間でなく、リンゴのかかる病気だと思っていた方もいらっしゃいましたが、りんご病は沖縄でも流行します。


 当院では、これまで4例のりんご病の母子感染を経験し、そのうち3例は梅雨の頃に感染していました。一般的には春先から夏にかけて流行しますが、最近関東で流行しているので、そろそろ沖縄でも流行するかもしれません。


 りんご病はパルボウイルスB19というウイルスによって起こります。小さいお子さんがかかると両頬が赤くなることから、りんご病と呼ばれますが、大人がかかるとかぜ症状や関節痛などが出たりします。


 妊婦さんの場合、胎盤を通して胎児に感染し、胎児の造血が障害されるので胎児貧血となり貧血がひどくなると心不全、むくみ(胎児水腫)へと進むことがあります。4~6年ごとに流行し、最近では2007年、11年に流行しました。厚生労働省の調査では同年に69人の母子感染があり、うち49人(71%)が流産や死産となっています。胎児水腫となっても約1/3は自然回復するとされていますが、重度だと胎内で亡くなる率が高くなります。


 りんご病にはワクチンがないので予防接種ができません。せきや唾液などから感染するので、患者さんとの接触を避けたり、マスクや手洗いなどが必要です。


 保育園などで流行している時期は、妊婦さんのいる家庭は子どもをお休みさせるのもありかもしれません。胎児の赤血球は大人の赤血球より寿命が短く、妊娠の早い時期に感染するほど胎児貧血が悪化しやすいです。


 もし感染した場合は、注意深く胎児の超音波検査をすると、ある程度貧血の予測がつきます。貧血が重度で胎児水腫となるようなら、当院では胎児輸血も想定して妊娠管理します。我々は、これまで4例のりんご病の胎児感染を経験しましたが、胎児輸血が間に合った2例は救命しています。


 とはいえ、いざ胎児輸血となるといろいろ準備が必要です。胎児にはできるだけ新鮮で濃い血液を用意したいので、台風に来られると確保が大変です。


 まずは予防が第一ですが、もし妊婦さんが感染した場合は早めの対応が必要なのでご相談ください。

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