難病指定された「なす病」
眞榮城尚志・新垣病院(2015年5月1日掲載)
「なす病」といっても野菜のなすではありません。信州大学病理学教室の「那須教授」の名前が付けられたもので、日本では俗に「なす病」と呼ばれることがあります。
1961年、寺山により最初の臨床報告があり、以後「特異な骨の病気」として発表が続きました。70年、那須教授が初めて病理報告を行い、病気の詳しいことが分かりました。日本ではそれまで報告のなかった珍しい病気だったため、以後「那須・ハコラ病」と呼ばれています。外国では59年、フィンランドからハコラ医師の報告があり、70年代に日本およびフィンランドで症例がまとめられました。その他の外国からの報告は現在でも少なく、非常に珍しい病気です。
日本では今日までに約200例以上の報告があり、昨年、難病に指定されました。私は78年、埼玉医大病院で自身2例目の症例を経験しました。
患者の父親に「こんなに珍しい病気が、なぜ難病に指定されていないんですか」とお叱りを受けたことが、昨日の様に思い出されます。
病気は10~20歳代の発病が多く、主に関節痛と病的骨折で整形外科を受診して発見されています。
その後、30歳代でけいれん発作、人格変化、精神神経症状、認知症など精神科で相談を受けることがありますが、極めて珍しい病気のため一生に一度も遭遇しない医師も多いと思います。
レントゲン検査で長管骨(手足の長い骨)の骨端に、のう胞状の多発性の陰影が見つかれば「なす病」の疑いが高くなります。最近、骨形成に関係する遺伝子に異常が見つかり、骨造成が低下して骨がもろくなり「骨粗しょう症」のような状態となって病的骨折を起こすことが分かってきました。
病変は脳にも及び、けいれん発作、人格変化、精神神経症状を呈し、最終的には認知症となります。
従って「若年発症の認知症」の場合この病気も念頭に置く必要があります。
半数に血族結婚の遺伝負因が認められ(常染色体劣性遺伝)、性差では若干男性に多い様です。最近の研究で遺伝子異常が見つかり、国はこの病気の解明の特別研究班を立ち上げています(那須ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究班)。
子供の頃から「駆け足が苦手、運動が不得意、手先が不器用、関節痛があり、病的骨折を繰り返す」方は一度、整形外科を受診して相談してみて下さい。
その際は是非、骨のレントゲン検査をお願いすることも忘れないで下さい。精神神経症状が出たら精神科受診をお勧めします。