心肺蘇生法

清水徹郎・南部徳洲会病院(2015年4月3日掲載)

予後左右する胸骨圧迫

 那覇市のウェブサイトによると、2013年度、市の119番通報から現場到着までの所要時間は平均8・5分だそうです。これは全国的な平均値とほぼ同じです。


 もしもご家庭で、職場で、目の前で誰かが意識不明となって倒れたら、真っ先にすべきことは119番通報なのは当然です。その後の8分あまり、あなたは何をするべきでしょうか?


 一般に、心肺停止状態で病院に搬送された患者さんが心拍再開する確率は、全国で約30~50%前後と言われています。しかしその後、意識を回復し社会復帰できる方は1%に満たないというのが現実です。では残りの方はどうなっているのでしょう?


  • (1)再度心肺停止となる
  • (2)脳死状態となる
  • (3)植物状態となって社会復帰不可能

 このことは、心肺停止状態で真っ先にダメージを受けるのは脳である事を意味します。


 心臓・呼吸が停止したときに、救急隊、病院では、胸骨と呼ばれる胸の中心を圧迫して心臓マッサージを行い、次に人工呼吸を行います。心停止のタイプによっては電気ショックが適応になります。


 今では、コンビニエンスストアや公的施設などにAEDと呼ばれる電気ショックの装置が当たり前に用意してあります。


 これほどAEDが普及したにもかかわらず、05年と10年の統計を比較すると、心肺停止症例の予後はあまり改善していないことが分かりました。


 このことは電気ショックを行う前に胸骨圧迫(心マッサージ)が行われていたかどうかが、予後を左右していると推測されます。多くの場合、心停止直後の血液内には十分酸素が含まれています。


 意識がない! ぱっと見て正常な呼吸をしていない! そのような場合は119番通報の後、胸骨圧迫をする事により脳への酸素供給が維持されます。10年から、胸骨圧迫だけで行うHand only CPR「最低限、胸の真ん中を1分間100回以上、5センチくらいの深さまで押すこと」が推奨されています。


 従来の人工呼吸法を組み合わせなくとも、救急車が到着する前に胸骨圧迫が行われたかどうかで蘇生率、社会復帰率が約1・9倍改善すると言われています。


 勇気を持って、あなたの両手で救命しましょう!


 そして機会があれば、人工呼吸やAEDの使用を含めた1次救命処置(BLS)をぜひ、学んでみてください。

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